静岡缶詰協会や静岡産業大学などが商品化した「みかんとシナモン香る鮪油漬け」

海鮮市場を運営する清水河岸の市協同組合(静岡市)や静岡缶詰協会(同)、静岡産業大学など6社・団体がミカンやシナモン入りのひと味違うツナ缶を商品化した。数値化しにくい人の感性を科学的に分析する感性工学を取り入れ、静岡県が国内生産を独占するツナ缶に上質さや食べるまでの「わくわく感」を追求したという。

「みかんとシナモン香る鮪(マグロ)油漬け」は90グラム入りで価格は税抜き270円。ミカンの爽やかさやシナモン特有の香りがツナのオイル漬けのうまみを引き立てる。インバウンド(訪日外国人)などの新たな土産品として、3月から「清水河岸の市」に置く缶詰の自販機や新東名高速道路の静岡サービスエリア(SA)で販売する。

開発は「高級感があってわくわくする缶詰」をテーマに進めた。静岡産業大の熊王康宏教授のゼミが協力。感性工学に基づいてアンケート結果をグラフで可視化する手法「グラフィカルモデリング」などを活用して最適な味を選んだ。

「みかんとシナモン香る鮪油漬け」を発表する静岡産業大学の熊王康宏教授(右端、3月)

最初にツナと様々な果物を組み合わせ、大学のオープンキャンパスの際に約20人に食べ比べてもらった。味や香り、お酒との相性などを評価軸として参加者にアンケートをとり比較した。

ツナ缶と同じく静岡県特産のミカンを候補としたが、アンケートの分析結果から香りの要素が足りないことがわかった。ミカンに合うスパイスとしてシナモンを選び、主婦層や学生など複数の年齢層に再び食べ比べてもらい味を評価。シナモン入りの方が総合評価が5倍も高かった。

開発にかかった期間は約5カ月。熊王教授は感性工学に基づく商品開発について「言語化が難しい味などの評価を目に見える形で比べられ、開発のシステム化やハズレのない商品作りにつなげることができる」と話す。

パッケージデザインにも学生が関わった。担当した女子学生は「富士山やマグロなど静岡を代表するものを落とし込んだ。『わくわく感』をどうデザインするかに苦労した」と話した。

静岡市産学交流センターの産学共同研究事業の一環で開発した。静岡の缶詰メーカーは「缶詰王国静岡」の共通ブランドで高速道のSAや駅の売店で土産用缶詰を販売してきた。新型コロナウイルス禍によって観光客が減り、対面販売を敬遠する傾向も見られて需要が落ち込んだ。

そこで静岡缶詰協会は静岡産業大などと同事業を通じ2022年に清水河岸の市、23年は静岡SAにインバウンドや県外客らの土産需要の取り込もうと「缶詰自販機」を置いた。近くに英語や中国語、韓国語のパンフレットを用意した。次なる取り組みが静岡らしさを極めた今回の新商品だ。

販売動向の調査などにより自販機による缶詰の販売は軌道に乗るメドが見えたという。「自販機販売の浸透で缶詰王国静岡の知名度が上がった。企業や自治体などと新たなつながりも生まれた」(担当者)。コロナ禍でたどり着いた事業に商機を見いだす。

(大倉寛人)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。