「業務スーパー」を展開する神戸物産が快進撃を続けている。13日発表した2023年11月〜24年4月期の連結決算は、純利益が前年同期比36%増の123億円となり、上半期としては過去最高を更新した。独自のプライベートブランド(PB)商品の値ごろ感で節約志向の消費者を取り込みつつ、食品メーカーとしてコスト削減を進めて採算を向上させている。

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売上高は12%増の2481億円、営業利益は25%増の177億円だった。上半期では過去最高だった21年11月〜22年4月期の純利益(110億円)と営業利益(147億円)をそれぞれ上回った。売り上げも過去最高で、主力の業務スーパー事業が好調だった。

業務スーパーは4月末時点で全国に1062店あるが、神戸物産の直営店はわずか4店だ。大半はフランチャイズチェーン(FC)店で、神戸物産はFC店に食材を卸したり、自ら生産するPB商品をFC店に販売したりすることが主力事業になる。4月末の業務スーパーの店舗数は1年前に比べて39店(3.8%)増えたのに対し、神戸物産の上半期の業務スーパーへの商品出荷実績は前年同期に比べ11.7%増えた。

食品の値上げラッシュが続くなか、業務スーパーも定期的に値上げをしている。商品売り上げの34%を占めるPBは、その3分の2が東南アジアなどから独自ルートで仕入れる輸入食品で、円安も重荷だ。それでも「他のスーパーよりも相対的に値ごろ感があることが集客でプラスに作用している」(岩井コスモ証券の饗場大介シニアアナリスト)と評価されている。

業務スーパーは深めの冷凍ケースで商品の補充回数を減らすなど低コスト運営を磨く(大阪市の天下茶屋駅前店)

国内で生産するPBも強みだ。SNSやテレビ番組などで商品を紹介されることもあり、豆腐のケースに入った「リッチチーズケーキ」などのヒット商品が生まれている。また、商品企画力だけでなく、PBを自社で生産する食品メーカーとしても強みを磨いている。

4月には約81億円を投じた子会社の宮城製粉(宮城県亘理町)の新工場が稼働を始めた。床面積は約2万平方メートルで国内に26あるグループ工場の中でもトップクラスの規模を持ち、レトルトのカレーや煮豚などを生産する。沼田博和社長はかねて「PB強化のために年間100億円規模の投資を工場に振り向ける」という戦略を掲げている。

神戸物産の沼田博和社長

配送ルートの効率化など地道なコスト削減も実を結びつつある。23年11月〜24年4月期の売上高営業利益率は7.1%と前年同期から0.7ポイント改善した。また、営業外費用に計上する為替予約などに関連するデリバティブ評価損が3億円となり、前年同期の16億円から大幅に縮小したことも純利益の押し上げ要因になった。

24年10月期通期の業績予想は据え置いた。売上高は前期比8%増の4980億円、純利益は5%増の215億円になる見通しで、いずれも過去最高を更新する。

業務スーパーの店舗数は10月末には1083店になる見通し。期中に35店増の計画だ。FC加盟のロイヤルティーは総仕入れ高や対象商品仕入れ高の1%となっており、集客力を期待して新規出店を希望する企業も多い。FC加盟大手のG-7ホールディングス(HD)の金田達三会長兼最高経営責任者(CEO)は5月に開いた決算説明会で「業務スーパーは今後もどんどん出店したい」と語った。

神戸物産は業務スーパーの店舗を1500店以上にすることを将来の目標としている。さらなる出店拡大をにらむ一方で、沼田社長は「今後は店舗間で顧客獲得を争ってしまう、カニバリズムにも配慮しないといけない。ハイペースでの出店は難しくなる」と語る。

外食・中食事業にも力を入れる。業務スーパーの店舗内を中心にFC展開する総菜店「馳走菜(ちそうな)」などの店舗数を26年10月期には現在の3割増の200店舗体制にしたい考えだ。現在は直営で21店を展開している焼き肉オーダーバイキングの「プレミアムカルビ」でも、26年10月期にはFC展開を始める。業務スーパーの好調を維持しつつ、食材を共通化できる外食・中食事業を拡大する。神戸物産は新たな課題に向き合っている。

(堀尾宗正)

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