西日本鉄道が設置した系統用蓄電池=福岡県宇美町で2024年6月10日午前11時53分、久野洋撮影

 太陽光などの再生可能エネルギーの発電が盛んな九州で、系統用蓄電池の整備が相次いでいる。天候で発電量が左右される再生エネが普及すると、電力価格が時間ごとに変動しやすくなる。安い電気を充電して高く売る事業で収益化を目指している。

どんな仕組み?

 西日本鉄道と自然電力(福岡市)は10日、福岡県宇美町内のバス車庫の敷地内に系統用蓄電池「西鉄自然電力バッテリーハブ」を開設した。約400平方メートルの敷地に出力1920キロワット、容量4659キロワット時の蓄電池を整備した。400世帯が1日に使う電力に相当する。総工費は非公表だが、リース契約で初期投資を抑え、自然電力の子会社が電力価格を予測して電気を売買する。

 系統用蓄電池は、送配電網に接続できる遊休地があれば整備できる。西鉄は2025年度までに計10カ所に増やす方針で、林田浩一社長は「再生エネの普及が進む九州では大きなビジネスチャンスになる」と意気込んでいる。

 JR九州も住友商事グループと熊本市に「でんきの駅」を開設し、蓄電池事業に参入した。九州電力も三菱商事などと共同で、福岡県香春町内で系統用蓄電池を運営している。資源エネルギー庁によると、九州では24年3月時点で送配電網への接続契約は計49万キロワットとなり、検討分も含めると705万キロワットが計画されている。

 太陽光発電が普及する九州では、晴天時に需要を大きく超える電力が生み出される。電気は送配電設備のトラブルを防ぐために需要量に合わせて発電する必要があり、晴天時に発電を一時的に止める「出力制御」が頻発している。出力制御時、電力の卸売り市場では価格がほぼ0円となる。

 一方、夕方に太陽光の発電が落ちると1キロワット時あたり十数円に上昇するため、上手く売買すれば蓄電池で差益を稼ぐことができる。系統用蓄電池が増えれば再生エネの有効活用ができるため、国も普及を後押ししている。【久野洋】

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