九州電力子会社で再生可能エネルギー事業などを手がける九電みらいエナジー(福岡市)は17日、2050年までの長期的な経営の方向性を示した「2050経営ビジョン」を発表した。事業が現金を稼ぐ力を示す指標とされるEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を1500億円以上とし、24年度見通し(約200億円)に比べ7.5倍に伸ばすとの目標を掲げた。
九電は再生エネ事業をみらいエナジーに集約する一環として、1日付で地熱発電事業を移管した。手続きが終わり次第、水力も移す。これにより、みらいエナジーは太陽光や風力、バイオマスを加えた主要な再生エネ5電源をフルラインで持つ国内唯一の事業者となる。九電本体では今後、原則として火力と原子力のみを担う。
17日は両社が事業統合を記念する式典を福岡市内で開いた。みらいエナジーの水町豊社長は「顧客へ多種多様な提案ができるようになる。世界に目を向けながらニーズに応えていきたい」と述べた。九電の池辺和弘社長は「再生エネの主力電源化の取り組みを大きく前に進めるもの。九州から日本の脱炭素をリードしていく」と強調した。
みらいエナジーの再生エネ電源は地熱と水力の統合後、開発中を含め262万キロワットと、21年度末(63万キロワット)から大幅に増加。国内の再生エネ発電事業者でトップクラスの規模になる。
地熱や水力は時間や天候、季節に左右されないため、一定量を安定発電できる「ベースロード電源」の比率は8割に高まる。工場やデータセンターなど安定供給を求める顧客のニーズにも対応しやすくなるとみる。
今後は風力や地熱などで新規の電源開発を拡大する方針。需給運用事業をはじめとする再生エネ関連事業を強化するほか、再生エネからつくる「グリーン水素」といった新規領域への展開も検討していく。
経営ビジョンは再生エネ事業に関わる若手社員が主導し、ワークショップや役員との意見交換を重ねて策定した。50年にありたい姿を「みらいを拓(ひら)く、世界有数のグリーンエネルギー企業になる」と規定した。みらいエナジーによると50年時点でEBITDAが1500億円以上あれば、再生エネ事業者で世界上位10位以内が狙える規模だという。まずは30年度に600〜800億円を目指す。
(福島悠太)
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