【ニューヨーク=清水石珠実】米メディア界の大物、バリー・ディラー氏が米メディア大手パラマウント・グローバルの買収に関心を示していることが分かった。複数の米メディアが2日までに報じた。パラマウントは米映画製作大手スカイダンス・メディアと数カ月にわたり合併交渉を続けたが、6月に交渉を打ち切った経緯がある。
ディラー氏、30年越しの雪辱か
パラマウントは事実上のオーナーのレッドストーン家が非上場企業の「ナショナル・アミューズメント(NAI)」を通じて、議決権の約8割を握る。
米紙ニューヨーク・タイムズは1日、ディラー氏が会長を務める米ネット複合企業IACがNAIとの間で秘密保持契約(NDA)を結んだと報じた。機密情報を交換できるようにするNDAは、通常、M&A(合併・買収)手続きの第一歩とされる。
米経済テレビ局CNBCは2日、IACが近いうちにもNAIの買収に乗り出すかどうかを正式に判断する可能性があると報じた。現時点で、買収額などの詳細は分かっていないという。
米メディア経営者として長年の経験を持つディラー氏とパラマウントの関係は深い。1970〜80年代に、名門映画スタジオのパラマウント・ピクチャーズ(現パラマウント傘下)を最高経営責任者(CEO)として率いた。1990年代には、同スタジオの買収に名乗りを上げたが、最終的には故サムナー・レッドストーン氏に競り負けた。
その後、ディラー氏はIACを創業、有望なネットサービスを積極買収している。IACは、ニュースサイト「デイリー・ビースト」や介護情報サイト「ケア・ドット・コム」などを傘下に持つ。
パラマウント、動画サービスの統合検討
パラマウントはM&A協議と並行して、傘下のネット動画配信サービスの提携先も探している。自社の配信サービス「パラマウント+(プラス)」は24年3月時点で契約者7100万人と、世界で2.6億人を超える専業のネットフリックスの背中は遠い。通年で16億ドル超の赤字だ。
打開策として、同社はパラマウント+をほかの企業のサービスと統合させることを検討中だ。CNBCによると、パラマウントは現在、米ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)など複数のメディア企業と話し合いを持っているという。
パラマウントはパラマウント・ピクチャーズとともに、地上波のCBSやケーブル局の「MTV」や「ニコロデオン」などを傘下に持つ。パラマウント・ピクチャーズは、往年の名作「ゴッドファーザー」や「フォレスト・ガンプ/一期一会」などの有力なコンテンツを抱える。ソニーグループも、米投資ファンドのアポロ・グローバル・マネジメントと共同でパラマウントを買収することに関心を示した。
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