アイキャンのサービスのアプリ画面では担当者が児童の体の傷の場所や状態などを入力する

児童相談所(児相)の業務効率化サービスを手掛けるAiCAN(アイキャン、川崎市)は、虐待の疑いがある子どもの一時保護を児相が裁判所に請求する書類の作成支援機能を開発する。2025年2月にも既存サービスに追加する。改正児童福祉法の施行で25年6月から新たな書類提出が必要になるため、児相の業務負担の増加が懸念されていることに対応する。

新機能の開発に向け、第三者割当増資で2億1500万円を調達した。アイキャンは児童虐待事案の情報を一元管理するクラウドサービスを提供している。児相の担当者らがアプリで通報や訪問調査などの内容を端末に入力し、効率的に記録・共有することが可能だ。人工知能(AI)などを用いて児童の安全確保をサポートする機能もある。

22年の改正児童福祉法の成立で、児童の保護者が一時保護に反対した場合、児相は裁判所に保護の必要性を示す「一時保護状」の提出が必要になった。25年6月から施行予定のため、同社はアプリに一時保護状の作成支援機能を追加する。児童の保護の理由などを入力すれば指定の様式でスムーズに作成・印刷され、裁判所に提出できるようにする。

こども家庭庁によると、22年度の児相の虐待相談対応件数は約22万件(速報値)に上り、00年度と比べて10倍以上増えた。一方で相談に対応する児童福祉司数は約5800人(22年度)で人手不足が大きな課題となっている。

アイキャンは23年度の中小企業庁の補助金事業で新サービスの実証実験を6自治体で実施した。各自治体で児童虐待対応の書類作成時間が大幅に削減され、「支援業務に充てる時間が増えた」との評価を得たという。24年度内に10自治体への導入を目指す。

第三者割当増資については、ベンチャーキャピタル(VC)のANRI(アンリ)やHIRAC FUND(ヒラクファンド)などが引き受けた。調達資金はサービスのセキュリティー強化や人材採用にも充てる。

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