記者会見するきらやか銀行の川越頭取㊧と西塚次期頭取(9日、山形市)

事実上「国有化」状態にあるじもとホールディングス(HD)傘下のきらやか銀行は9日、新たな頭取に西塚英樹取締役を選んだと発表した。9月に開くじもとHDの臨時株主総会後の取締役会で正式に決める。川越浩司頭取は2024年3月期に単体で244億円の最終赤字を出した責任を取って9月に辞任する。同行再建と注入されている公的資金返済に向け、西塚次期頭取は重責を担う。

「営業店と本部をバランスよく知り、地元や取引先企業への思いもあつい。行員を背中で引っ張る力を持った人物だ」。川越氏は同日の記者会見で西塚氏を後継に選んだ理由を語った。

記者会見する、きらやか銀行の川越頭取(9日、山形市)

外部から人材を招くのではなく内部昇格とした理由については「地域金融機関のトップは地元に住み、地元をよく知り、信念と責任を持っていることが大事だ」と説明。「国からも『適切な人材を選んでほしい』と言われていた」とも語った。

じもとHDは現在、国が株主総会で議決権の63%を占め、国の影響下におかれている。24年3月期の赤字拡大に伴い、優先株に配当をしないと決定。国が6月の定時株主総会から議決権を得た。

これまでに傘下で山形県が地盤のきらやか銀が480億円、仙台銀行が300億円の優先株を発行して国から資金を調達している。計780億円の公的資金のうち、きらやか銀がリーマン・ショックの余波で09年に注入された200億円分の返済期限が24年9月末に迫っている。

同行は21年3月期に48億円、23年3月期に83億円、24年3月期に244億円のそれぞれ最終赤字を計上した。返済に向けた利益剰余金が積み上がっていない。

そのため、じもとHDは200億円の公的資金返済について期限の延長を国側に求め、6月末に経営強化計画を金融庁に改めて提出した。8月上旬までに返済期限の延長期間や返済方法などの方針を金融庁側と協議のうえで固める。

川越氏は同強化計画について「中身は国と協議中で固まっていないが、西塚氏の考えも踏まえて変わっていく部分もあるだろう」と含みを持たせた。

金融庁の下にあり、有識者らが構成する金融機能強化審査会は8月下旬から9月ごろに返済延期の是非を決定する見通しだ。川越氏は同審査会の日程などを踏まえ、国側との交渉にメドがつく9月の段階で西塚氏に頭取を引き継ぐ。

公的資金200億円の返済期限の延長が決まったとしても、きらやか銀の経営見通しが前途多難な状況に変わりはない。ほかの280億円分の返済期限も控えており、37年に100億円、48年に180億円の公的資金を返す必要もある。

記者会見であいさつする、きらやか銀行の西塚次期頭取(9日、山形市)

西塚氏は記者会見で、再建について「時間はかなりかかると覚悟しているが、現状をなんとか変えたい。具体策はこれから詰めるが、金融庁、SBIホールディングス、仙台銀など関係各位の知見をいただきながら、最終的にわたしが判断したい」と語った。

「地域と共に活(い)きるという理念は変えず、考え方や行動を変えていきたい」と宣言した。取引先企業との向き合い方については「信頼回復のためにも、まずは顧客訪問を徹底したい。とにかく顔を出して的確な情報を得る。この当たり前のことを徹底してやれば、与信管理にもつながる」とも話した。

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