レカネマブに対する欧州での否定的見解を受け、29日の東京株式市場でエーザイの株価は大幅に反落した

29日の東京株式市場でエーザイの株価が大幅に反落した。一時前週末比927円(14%)下落し、終値は860円安の5768円だった。エーザイと米バイオジェンは26日、共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、欧州連合(EU)で新薬認可を判断する欧州医薬品庁(EMA)の評価委員会から否定的な見解を受領したと発表した。欧州での実用化が見送られる可能性が出たことを嫌気した売りが膨らんだ。

EMAの下部組織である欧州医薬品委員会(CHMP)が見解を示した。レカネマブは病気の進行スピードを27%緩やかにする効果が確認されているが「新薬の有効性は(脳出血などの)副作用リスクを相殺しない」とみている。

モルガン・スタンレーMUFG証券の村岡真一郎氏は「欧州での業績貢献について高い期待を持っていたわけではない。しかしCHMPが認可に否定的見解を示したのは残念なニュースだ」とコメントした。

EMAの判断は欧州各国の承認に影響する。エーザイとバイオジェンはCHMPに再審議を請求するという。再審議の開始時期は未定としている。

欧州では2023年1月に欧州医薬品庁に販売承認の申請をしていた。当初、欧州では24年4〜6月期に承認を得られるとの見通しを示していた。エーザイは今期の業績への影響は軽微としている。

レカネマブは日本のほか、米国、中国、韓国、香港、イスラエルで承認されている。日米中では実際に患者への投与が始まっている。

仮に欧州での承認が見送られれば、エーザイのレカネマブの中長期の販売計画に影響が出る可能性がある。同社はレカネマブの販売額を32年度に世界で1兆3000億円規模とする目標を掲げており、うち14%がヨーロッパや中東、アフリカ市場での売り上げになると見込んでいた。

大和証券の橋口和明シニアアナリストは「米国市場が最重要だ。欧州での承認判断が米国の売り上げに与える影響は限定的」と話す。一方で「アルツハイマー病の市場規模から、この薬剤には相当なポテンシャルがあるという見方が従来あった。今回有効性や安全性の評価について慎重な見解が示されたことで、楽観的に見ていた投資家が見方を慎重に改める可能性は十分ある」として、今回の発表は株価にネガティブに働くとみる。

エーザイは最大市場の米国や、人口が多く潜在的需要の高い中国、インドなどアジア地域での拡大を進める。治療薬自体の使い勝手を高める技術も開発する。レカネマブを1分程度で投与できる皮下注射製剤について、まずは継続して治療する「維持投与」向けで25年度の実用化を目指している。

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