内閣府が入る中央合同庁舎8号館=東京都千代田区で2021年1月19日、赤間清広撮影

 内閣府は29日の経済財政諮問会議で、財政健全化の指標となる国と地方の「基礎的財政収支」(プライマリーバランス=PB)について、2025年度に8000億円程度の黒字に転換するとの試算を示した。実現すれば小泉政権で01年に政府目標として掲げて以来、初の黒字となる。岸田文雄首相は「経済あっての財政」と述べ、経済成長を優先させつつ、財政健全化を図る方針を示した。

 PBは社会保障や公共事業などの行政サービスを提供するための政策経費を、借金に頼らずどれだけ賄えているかを示す指標。内閣府は年に2回、中長期試算を公表している。内閣府が1月に公表した試算では、高い経済成長を実現しても25年度のPBは1・1兆円の赤字見込みだった。

 今回の試算では、好調な企業業績や物価高などを背景にした税収増により、収支が改善することを見込んだ。社会保障費の歳出効率化も想定し、国内総生産(GDP)の0・1%に相当する8000億円程度の黒字となると試算した。

 一方、今回の試算は補正予算の編成を織り込んでいない。政府は毎年のように経済対策を実施し、その裏付けとなる補正予算を編成している。今秋は年金生活者や低所得世帯への給付金などを検討しており、仮に大型の補正予算を組んで執行が25年度にずれ込んだり、25年度の補正予算が大型化したりすれば、PBが赤字になる可能性もある。

 内閣府によると、PBが黒字だったのはバブル期の1991年度が最後で、その後は赤字が続いている。02年に「10年代初頭」の黒字化を目指したが、先送りが続き、18年に安倍政権が掲げた「25年度の黒字化」を岸田政権も堅持してきた。【古川宗】

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