大光銀行(新潟県長岡市)の頭取に6月25日就任した川合昌一氏(62)が毎日新聞のインタビューに応じ、「顧客を一番理解する銀行を目指す」と抱負を述べ、対面営業を強化する考えを示した。【聞き手・神崎修一】
――5年ぶりのトップ交代となりました。
◆4月からの新しい中期経営計画を策定したタイミングでバトンタッチされました。この計画は当行の使命や存在価値などをじっくり話し合い、時間をかけて策定しました。具体的な指標としては、3年後にROE(自己資本利益率)4%、最終利益で30億円の達成を掲げています。
――どのように実現しますか。
◆ポイントは営業推進にあると考えています。業務の改革を進める中で、人的資本を可能な限り顧客との対面営業に投入すると決めました。具体的には、事務部門を中心に3年間で38人を営業部門に配置転換します。営業が顧客の悩みを聞いたり、提案したりという時間を増やします。法人営業で言えばこの時間を現在の2倍に増やしたいですね。
――県内の経済状況をどう見ていますか。
◆1月に能登半島地震があり、かなりの事業者が被災しました。流通も麻痺し、建設資材などが思うように仕入れできないという影響も出ました。3月まではかなり景況感が悪かったと思います。取引先にアンケートを取ったところ、足元では復旧が進み、景況感は震災前に戻って来ています。ただ9月の見通しは決して良くありません。円安やエネルギー価格の高騰などが影響していると思います。賃上げで人件費負担も増え、中小企業は価格転嫁が十分にできていません。収益は厳しい状況に置かれています。
――SBIホールディングスと資本業務提携を結んでいます。
◆単独では顧客の経営課題をすべて解決するのは難しいと考え、外部との提携を拡大してきました。資本提携の前から、SBIとは業務連携をしていました。いくつかの第2地銀がSBIと戦略的業務提携を結ぶ中で、我々もサステナブル(持続可能な)経営を続けるためにはSBIのノウハウが必要と提携を決めました。顧客から「SBI傘下に入るのでは」と心配の声も頂きましたが、そんなことはありません。
――メーカー勤務を経て中途入行されたそうですね。
◆当行では珍しいことではありません。新入行員をほとんど採用できない時代があり、行員の年齢構成のバランスが悪くなっていました。1990年代に100人ぐらいの中途採用があり、そのうちの1人が私です。新潟中央銀行から移った行員もたくさんいます。外部経験者を現在の17%から、10年間で35%に引き上げようと考えています。
――店舗の統廃合は進めますか。
◆店舗の統廃合は3月まででほぼ実施済みです。顧客との接点は重要で、これ以上店舗を統廃合する予定はありません。ただ、老朽化した店舗を抱えています。このような店舗は町の中心街にあり、駐車場も十分ではありません。建て替えに合わせて、立地条件から見直すようにしています。例えば新津支店(新潟市)は道路が広い駅の西口側に移ることを計画しています。こういった移転の際に、近隣の店舗を集約することはありえます。
――他の金融機関との差別化は。
◆第四北越銀行(新潟市)とは規模に差があり、同じとは思っていません。規模に関係なくできることは、顧客を一番に理解することです。もともと当行の行員は地域経済に貢献したいと思い入行したはずです。初心に帰り、顧客がどのような事業を展開し、何に困っているかを考え、真剣に熱量を持って話をすることが必要です。顧客の心をしっかりとつかめれば、強固な関係が構築できると思っています。
大光銀行
1942年設立された長岡市に本店を置く地方銀行。2024年3月期決算(単体)の最終(当期)利益は16億8900万円、総資産1兆6228億円。県内の地方銀行では第四北越銀行(新潟市)に次ぐ規模を誇る。従業員数799人。県内62店舗のほか、群馬や埼玉など関東地方にも支店を置く。ネット証券大手のSBI証券を傘下に置くSBIホールディングス(東京)と22年に資本業務提携を締結し、幅広い金融商品の提供を目指している。
川合昌一(かわい・しょういち)
1961年生まれ。新潟市出身。東京理科大理工学部卒。93年入行。桶川支店長、審査部長、関東地区本部長、営業本部長などを得て、24年6月に頭取に就任した。大行銀は財務省出身者が頭取を務めてきたが、19年に就任した石田幸雄頭取(現会長)に続き、同行出身者が2代続きトップを務める。
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