総工費約24億円を投じた「NKG倉庫」(2日、奈良県天理市)

工芸品など生活雑貨を扱う中川政七商店(奈良市)は2日、奈良県天理市内に新設した自社初の物流施設「NKG倉庫」を報道関係者に公開した。約60の直営店舗や電子商取引(EC)向けの拠点とする。同社は零細企業が多い工芸メーカーの経営コンサルティングも手がける。商品の受け入れや管理・出荷を通じて物流面でも支援の幅を広げる。

NKG倉庫は6月から稼働を始めた。名称は中川政七商店の社名と、同社のビジョンである「(N)日本の(K)工芸を(G)元気にする!」から付けた。同社の100%出資子会社、NKG倉庫(天理市)が運営し、パート従業員を中心に約100人のスタッフが働く。

西名阪自動車道の郡山インターチェンジ(IC)から車で約3分の場所に立地する。今回、「物流の2024年問題」を克服するためヤマト運輸と連携。トラック予約システムや、多種多様な梱包形態の荷物を計測できる自動採寸計量器を導入した。ドライバーの待機時間の大幅削減につながるという。

ヤマト運輸と連携し、様々な梱包形態に対応できる自動採寸計量器を導入した

建屋は3階建て延べ床面積約9000平方メートルで、総投資額は約24億円。1階が入庫作業と大量在庫を保管するスペース、2階にECの受発注業務を担当するオフィスや商品の撮影スタジオを設けた。3階は製品の検品作業のほか、出荷する商品をピッキングしたり梱包したりするフロアになっている。

同社は製造小売り(SPA)事業を主力とし、製造委託先の工房は全国に約800社にのぼる。NKG倉庫の新設で、奈良県内4カ所に分散していた物流機能を集約する。少量多品種の商品が多い中、こうした商品の物流を一手に担う。現時点で1日10万個の商品を出荷しているという。

取引先の工房が使用する部材を倉庫内に保管し、必要時を必要量を配送する

またNKG倉庫では取引先の工房の製造に必要な布地などの部材も保管し、必要量を工房に適時配送する。各製造工程後には全ての商品を倉庫に集めて検品し、次の工程に送り出すなど品質管理も徹底。NKG倉庫を核に、ものづくりの川上から川下までの各段階で関与を強め、取引先の負担を軽減する。

中川政七商店は全国の工芸メーカーの経営支援を手がけ、事業改善や商品開発を支援してきた。NKG倉庫では同社と取引のないメーカーの独自商品も受け入れ、在庫管理や発送作業を肩代わりするという。支援体制を強く打ち出すことで、取引先の新規開拓にもつなげるねらいだ。

工芸品は零細なメーカーが手がけることが多い。地方では物流を支える人材の不足や高齢化、問屋の廃業など、事業を取り巻く環境も厳しさを増している。

倉庫公開後にプレゼンテーションする中川政七会長(2日、奈良県天理市)

同日の倉庫公開でプレゼンテーションした中川政七会長は「これまで通りやっていても工芸を元気にするというビジョンは達成できない。今まで以上にしっかりアクセルを踏む」と話した。メーカーがものづくりに集中できる環境を整えるなど、これまでよりも一歩踏み込んで工芸産地の支援を目指す。(高田哲生)

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