国内市場は家庭用、業務用ともに売り上げが増えた(7月、滋賀県草津市の工場)

ダイキン工業が6日発表した2024年4〜6月期の連結決算は、純利益が前年同期比21%減の630億円だった。米国や欧州で銀行から借り入れた運転資金の金利負担増が響いた。急激な物価上昇が続くトルコの子会社で適用した超インフレ会計も利益を圧迫した。本業の空調事業は家庭用の需要が低調だったが、堅調な業務用が収益を補った。

売上高の4割を占める米国などでの金利負担が重く、支払利息が32億円増えた。トルコでは物価上昇によって売掛金の価値を目減りさせるなどの処理でインフレ会計調整額が12億円増加した。6月に会長を退任した井上礼之氏に支払う特別功績金として43億円を計上したことで特別損失がかさんだことも最終減益の一因となった。

空調事業の収益は底堅い。全体の売上高は14%増の1兆2510億円のうち、空調・冷凍機事業は16%増の1兆1688億円となった。米国では物価上昇や住宅ローン金利の高止まりで家庭用の需要自体は弱いが、省エネ性能の高い商品の拡販などで売り上げを増やしたほか、データセンターや工場向けなど業務用が大幅に伸びた。

日本でも猛暑に備えた需要が支えとなり、家庭用・業務用ともに前年同期を上回った。オフィスや工場などの設備投資が増えているほか、客足が回復している商業施設向けの伸びも追い風となっている。

一方、欧州では円安・ユーロ高による押し上げ効果もあったものの、売上高は微減となった。ガスを使う暖房機から、電気で室外の熱を取り込むヒートポンプ暖房に切り替える動きが広がっていたが、ガス価格の下落でコスト優位性が低くなったことに加え、各国が補助金制度を見直し、需要がしぼんだ。

補助金制度の先行きは読みにくいものの、ダイキンの幹部は「(需要減に)底打ち感があり、今年度後半以降は少しずつ回復する」と見込む。秋ごろにはポーランドでヒートポンプ暖房の新工場が稼働する予定だ。数年後には需要が戻るとみて、販売網の拡大や営業の強化で事業基盤固めを急ぐ。

営業利益は1154億円で2%減った。人材の確保やイノベーションの創出へ人件費や研究開発費を増やしたため、販管費が16%増加したことが影響した。

2025年3月期通期は、売上高が3%増の4兆5400億円、純利益が3%増の2670億円とする従来予想を据え置いた。各国でのインフレと高金利の影響で消費や住宅投資が低迷し、事業環境は不透明さが増しているとしながらも、増収増益を維持する考えだ。

ただ、想定する通期の為替レートは1ドル=138円で、6日時点の円相場は1ドル=145円前後と、ここ数日で10円以上円高方向に振れた。想定レートを超えて円高になれば、業績の下方修正を迫られる可能性がある。

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