米グーグルは判決を不服として上訴する方針を示した(米カリフォルニア州の本社)

米司法省が米グーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで訴えた裁判で、原告側の訴えを認める判決が出た。米国で巨大IT企業の不当行為が独占と認定されるのはおよそ四半世紀ぶりになる。社会でITが果たす役割は大きくなっており、健全な競争環境の整備を急ぐ必要がある。

司法省は2020年に訴えを起こし、グーグルが米アップルに巨額の手数料を支払ってiPhoneに自社のインターネット検索サービスを標準搭載してもらう契約などが違法と主張していた。

米首都ワシントンの連邦地裁は5日、アップルなどがグーグルの検索サービスを標準搭載したのは相対的に高性能だったためと認める一方、契約が競争を妨げたと認定した。検索連動型広告の市場も独占し、価格がつり上がるなどの影響が出たとも指摘した。

米国では司法省が米マイクロソフトを反トラスト法違反で提訴し、2000年の一審判決で原告の訴えを認めている。これ以降は巨大IT企業への独占の認定が途絶えていた。司法省高官は同日、「歴史的な勝利だ」と述べた。

米国ではトランプ前政権の末期以降にグーグルを含む巨大IT企業4社を反トラスト法違反で提訴しており、今回の判決は進行中の裁判に影響を与えそうだ。

健全な競争環境を保つうえでは課題がある。グーグルは上訴の方針を示したため、サービスの見直しなどが実現するとしても数年後になる見通しだ。マイクロソフトの裁判でも決着までに時間がかかり、市場の成長期に効果的に介入できなかった経緯がある。

こうした課題への意識は世界の競争当局が共有しており、欧州では事前規制に当たるデジタル市場法(DMA)を施行した。技術が進化する速度が増すなか、当局が効果的に介入して競争を促す枠組みづくりは道半ばだ。

日本では巨大IT企業に取引先との契約条件の開示を義務付けるデジタルプラットフォーム取引透明化法を21年に施行し、このほど経済産業省がアマゾンジャパンとアップルに改善勧告を出した。スマホソフトウェア競争促進法も25年に施行する見通しだ。

巨大IT企業が豊富な資金力で法務部門などを拡充する一方、競争当局は資金や人員の面で見劣りする。各国の当局が連携を強め、競争を通じた継続的な技術革新を確実にしていく必要がある。

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