記者会見する小林製薬前社長の小林章浩取締役(右から2人目)。左隣は山根聡新社長(8日、大阪市中央区)

小林製薬は8日、紅麹(こうじ)原料を含むサプリメントの健康被害問題を受け、紅麹事業からの撤退を発表した。消費者からの信頼回復は難しいと判断した。同日付で就任した山根聡社長は記者会見で、特別顧問に就いた小林一雅前会長について「説明責任を果たすべきだ」と話した。

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小林製薬が記者会見を開くのは、健康被害の公表直後の3月29日以来、約4カ月ぶりとなる。紅麹関連以外の健康食品や医薬品について、山根氏は「健康に貢献できることを存在意義としたい」と話し、事業を継続する方針を示した。

今後に向けて①被害者への謝罪と補償②品質安全確認と再発防止③企業理念の見直し④経営体制の抜本的改革⑤従業員との対話――に全社を挙げて取り組むとした。安全を最優先として社内組織を再編する。

再発防止策については健康被害の原因究明の状況も見ながら、説明する機会を設けるとした。企業統治の改善策もまとめる。

会見では情報開示の遅れについて質問が相次いだ。1月に最初の健康被害の症例を把握していながら公表まで2カ月かかった。山根氏は「原因究明に傾注し、どういう結果をもたらすか想像力が働かなかった」と話した。創業家の影響が濃い企業体質について「当社の同質性に課題があった」とし、今後の対応について「創業家に忖度(そんたく)していくことはない」と語った。

7月に特別顧問に就任した小林一雅前会長が健康被害問題の発覚後、記者会見に登壇していないことについて、山根氏は「私の考えではあるが、説明責任を果たすべきだと思う」と話した。

小林章浩前社長は8日付で社長を辞し、取締役として補償業務を担当する。「創業家出身で本件発生時の社長である私が最後まで補償に取り組むことが課せられた使命」と、こわばった声で話した。

同日、健康被害を受けた人への補償受け付けを19日に始めると発表した。医師の診断書などから、対象製品の摂取と症状に因果関係が認められる人に補償する。医療費や慰謝料を支払い、症状による休業についても補償する。

未定としていた2024年12月期の通期業績予想も公表した。連結純利益が前期比41%減の121億円、売上高が3%減の1690億円になる見通しだ。23年12月期まで26期連続で続いていた最終増益がストップする。製品回収などにかかる費用として1〜6月期に約80億円を特別損失として計上した。関連費用はさらに膨らむ可能性もある。

一連の問題を巡り、消費者庁は機能性表示食品制度を見直す。医師が診断した健康被害情報が事業者に寄せられた場合、製品との因果関係が不明でも速やかに消費者庁と保健所に報告するよう義務付ける。

内閣府の消費者委員会は消費者庁からの諮問を受け、7月に食品表示基準の改正案を適当とする答申書をまとめた。健康被害の報告は施行予定日である9月1日から義務化する方針。

サプリメント形状の食品を対象に品質・製造管理に関する基準(GMP)に基づく製造も義務付ける。施行日から2年間の経過措置を設け、26年9月から義務化する予定だ。消費者庁は事業者が順守事項について自主点検できるよう指針を作成するほか、必要に応じて立ち入り検査できるようにする。

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