渋谷工業は9日、総額175億円を投じ金沢市などに工場を4棟建設すると発表した。4棟とも2025年夏に着工し、26年6月〜27年1月までに完成させる。3棟は主力の飲料用充塡機、1棟は人工透析システムを製造する。健康志向の高まりから海外でも乳製品や茶系飲料の需要が増えると見込み、製造に必要な飲料用充塡機の生産能力を増強する。

渋谷英利社長は175億円を投じ4棟の新工場を建設する方針を明らかにした(9日、金沢市)

9日の2024年6月期の決算記者会見の場で渋谷英利社長が明らかにした。同社は無菌で容器に飲料を入れる技術に強みがある。渋谷社長は「高いグレードの無菌が求められる乳製品や茶系飲料など『低酸性飲料』の需要は、健康志向の高まりから様々な国で増える」と分析。飲料用充塡機の生産能力は3棟合計で30%増える。

最大規模となるのは金沢市に設ける「森本テクノパーク新工場」(仮称)で、同市から土地を取得し建設する。同工場は飲料用充塡機の部品加工と組み立てに充て、延べ床面積は約1万5000平方メートル。飲料用充塡機用の残る2工場は部品加工などを担い、金沢市と石川県能美市にある同社敷地内でそれぞれ建設する。

人工透析システムの新工場には33億円を投じる。2階建ての既存工場を壊し、4階建てに新築する。自動化による生産効率化も進め、生産能力は約50%上昇する。中国やインドなどで人工透析が必要な患者が増えているといい、渋谷社長は「(医療機器は)すでに100カ国以上に輸出しているが、さらに強化してグローバル展開する」と述べた。

同社は30年までに連結売上高を2000億円とする目標を掲げ、インドに新たに営業拠点を設けるなど海外戦略を強化している。同日発表した24年6月期の海外売上高比率は約4割。渋谷社長は「日本では少子高齢化などから自動化などの先進的な取り組みのニーズは高い。そうしたアイデアを海外で生かし、全体的に売上高を上げたい」と述べた。

25年6月期の連結純利益は前期比6%減の92億円を見込む。人的投資の増加や原材料価格の上昇が影響する。売上高は前期比10%増の1270億円になる見通し。

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