JR九州高速船(福岡市)が日韓高速船で船内への浸水を隠蔽して運航を続けていた問題で、親会社のJR九州の役員が14日記者会見し「(隠蔽は)JR九州高速船の前社長の指示だった」と明らかにした上で「安全意識の欠如が招いた事態で、本当に申し訳ない」と謝罪した。
JR九州は13日付で隠蔽を指示したJR九州高速船の田中渉前社長を取締役に降格するなどした。日韓高速船は当面運休し、原因究明や安全管理体制の見直しに専念するという。
会見したJR九州の松下琢磨・取締役常務執行役員らによると、JR九州高速船は博多港と韓国・釜山港を結ぶ高速船「クイーンビートル」で2月中旬、船首部分に数リットルの海水が浸入しているのを把握したが、田中前社長の指示で法律上義務づけられている検査や修理、国への報告をしなかった。
少量の浸水が常態化しながらも、航海日誌などに「異常なし」と虚偽の記載をして運航を継続し、田中前社長の管理下で外部には公表しない形で日々の浸水量を記録していた。浸入した海水をポンプで排出しながら運航した事例もあったという。田中前社長が具体的にどのような隠蔽指示をしたかについては調査中としている。
5月下旬には浸水量が700リットル以上に増加したため、浸水を検知する警報センサーの位置を上にずらして作動しないよう隠蔽した。浸水の悪化に耐えきれなくなった5月末にようやく、初めて浸水が発覚したように装って国に報告した。
高速船は一時運休した後、7月に運航を再開した。一連のトラブルなどを受け、国土交通省が8月6〜7日にJR九州高速船に抜き打ち監査を実施。同社に対してJR九州が聞き取り調査をしたところ不正行為が発覚した。
運航再開の時期について、松下氏は「まずは体制・安全意識の改革が進まなければできない」と言及を控えたが、JR九州高速船の解散は否定した。
13日付で就任したJR九州高速船の大羽健司社長は「一言で言うと、安全管理体制が機能していなかった。私の役割は安全風土をしっかり根付かせることだ」と話した。
JR九州によると、11月下旬までの期間に約2万2000人分の予約が入っている。9月末までの分については運賃の返金に加えて、時期に応じて1万〜2万円の補償金を支払う形で対応を進めている。10月以降の予約については対応方針を検討中としている。
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