「LAGO 大津」の完成イメージを掲げる山本昌仁たねや社長㊨と佐藤健司大津市長(20日、大津市)

菓子製造・販売のたねや(滋賀県近江八幡市)は20日、大津市の琵琶湖岸で建設中の新たな大型店舗「LAGO(ラーゴ) 大津」を2025年3月24日に開業すると発表した。本社に併設する旗艦店「ラ コリーナ近江八幡」は県内随一の来客数を誇る。湖の美観を生かした環境配慮型の店舗となるラーゴも地元自治体などから新たな観光名所として期待されている。

たねや社長でグループ最高経営責任者(CEO)の山本昌仁氏が20日にラーゴの建設現場で開いた上棟式後の記者会見でオープンの日取りを明らかにした。山本氏はラーゴについて「水をテーマにし、(琵琶湖から離れた)『ラ コリーナ』とは全く異なる空間にしたい」と述べた。インバウンド(訪日外国人)を含め「ラ コリーナ」を超える集客数を目標に掲げた。

15年に開業した「ラ コリーナ」はイタリア語で「丘(小高い土地)」を意味し、建築家・建築史家として著名な藤森照信氏が設計に携わった。甲子園球場3つ分の広大な敷地で里山の風景を演出。直近のデータである22年の観光客受け入れ数は延べ約321万人と、滋賀県内の施設では7年連続のトップを維持する。たねやによると「ガラス張り」のバウムクーヘン工場を新設した23年は約400万人に達したという。

一方で「ラーゴ」はイタリア語で「湖」。水辺にある「大津湖岸なぎさ公園」内に新設する。同公園の一部を再開発する大津市主導の民活事業の一環だ。

再開発の対象となる敷地はサッカーコートの2面ほどの1万5000平方メートル。たねやがその半分にラーゴの建屋と駐車場を構えて20年管理・運営する。たねやはこれを取り巻くように生物多様性を意識した「琵琶湖の森」の整備も担う。整備後の管理は市側に委ねる。

琵琶湖の森を監修する成安造形大学(大津市)客員教授で写真家の今森光彦氏は20日の記者会見で、周辺地域の植生を再現した上で人間との共生もうたった「里山公園」構想を披露した。この考えに呼応するように店舗やカフェが入る2階建てのラーゴの建物は太陽光など再生可能エネルギー由来の電力を使い、二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを目指す。

店舗では新製品を含めた和菓子一式を取り扱う。「ラ コリーナ」で人気のバウムクーヘンも特別パッケージで販売する。カフェでは、併設する工房で焼きあげるカステラを提供する。山本氏は「外国人にも楽しんでもらい、たねやの菓子を世界に発表したい」と話し、インバウンドでにぎわう隣の京都市からも誘客する構えをみせた。

「LAGO 大津」の上棟式を終えたたねやの山本昌仁社長(右から2人目)ら(20日、大津市)

滋賀県の三日月大造知事はかねて「(ラーゴには)大いに関心がある」と語ってきた。たねやの和菓子やバウムクーヘンは首都圏でも人気が高く、県はラーゴを観光振興にも生かしたい考えだ。大津市の佐藤健司市長も琵琶湖の観光船が発着する大津港などとの連携でにぎわいを創出することを視野に入れる。記者会見ではラーゴと周辺を結ぶ交通手段として「湖上交通の活用やシェアサイクル」を例にあげた。

20年の西武大津店閉店で大津市内の店舗を失ったたねやにとって、ラーゴは懸案の再出店案件だった。それだけにとどまらず顧客を分散させることで「ラ コリーナ」周辺の混雑緩和につなげるねらいもある。

とはいえラーゴの近隣には大津市のランドマークでもある「びわ湖大津プリンスホテル」もあり普段から交通量が比較的多い。開業後に一帯が渋滞してにぎわいに水を差さないよう、駐車場を多めに確保するなど近隣施設との調整にもたねやは力を入れる考えだ。

(加賀谷和樹)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。