NTTのマーク=東京都千代田区で2023年9月6日、道永竜命撮影

 NTT法のあり方を議論している総務省の有識者会議は23日、通信のユニバーサルサービスについて検討する作業部会を開いた。全国一律の固定電話サービスを提供する義務を負うNTTはスマートフォンなどの利用が増加している現状を踏まえ、モバイルを軸にしたユニバーサルサービスへの変更を主張した。NTTはスマートフォンなどのモバイル回線に変えることで維持コストが軽減される試算を示したが、算定根拠が不明確だとする指摘が相次ぎ、この日の評価は見送られた。

 今月17日に改正NTT法が成立し、NTTに課されていた研究成果の開示義務が撤廃された。その一方で、固定電話を全国一律で提供する義務は残っている。日本電信電話公社の民営化に伴う1984年の法制定時には、国民生活に不可欠だった固定電話の提供を「ユニバーサルサービス」として義務づけることで規制をかけた。

 審議会でNTTは固定電話に加えモバイルもユニバーサルサービスに含めるよう提案。その結果、コミュニケーション手段として一般化している無料通信アプリ「LINE(ライン)」やメールの利用環境も保障されると主張した。

 対象の拡大に合わせて固定電話を現在のメタル回線から光回線などに変更した場合の必要コストを試算すると、年間30億~770億円の赤字になることがNTTから示された。しかし、複数の有識者から「数字の根拠が不十分で、外部検証できる客観性、透明性が担保できていない」との指摘があり、この試算に基づく議論は見送られた。NTT側は試算の前提条件や算出根拠などを今後の会合で提示し直す。作業部会終了後、同社の服部明利執行役員は記者団に対し、「まずは概算で大まかな検討の方向感を決めてから詳細な試算をするのが現実的な進め方だと思う」と話した。

 一方、有識者会合に出席した他の通信事業者からは、ユニバーサルサービスにスマホなどモバイル通信を利用する提案に対して「携帯の電波には不安定さがある。固定電話と同じ(サービスの)保障は難しいだろう」(楽天)などの指摘もあった。【藤渕志保】

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