新型コロナウイルス検査の検体を医療機関から回収する業務に就いていた男性(当時41歳)が、うつ病を発症して自殺したのは長時間労働が原因だとして、男性の妻が23日、勤務先の臨床検査会社などに計約1億1200万円の損害賠償を求める訴えを京都地裁に起こした。コロナ検査が本格的に始まった2020年春以降に仕事量が急増しており、妻側は「労働時間の軽減策を取らなかった」と訴えている。
訴状や代理人弁護士によると、男性は18年、京都府久御山町の「日本医学臨床検査研究所」に入社し、大阪北営業所(大阪府吹田市)に勤務。自社でコロナ感染の有無を検査するため、取引先の医療機関から検体を回収するなどの業務を担っていたが、遅くとも20年8月中旬にうつ病を発症し、同17日に自ら命を絶った。
妻の申請を受けた茨木労働基準監督署は、死亡前の5月中旬~6月中旬の残業時間が約84時間に上り、前月より約61時間も増えたことを確認した。コロナの感染拡大に伴い、PCR検査や抗原検査などの業務が本格的に始まった時期に重なるという。
そのうえで、同年7月14日から8月12日までの30日間では約98時間の時間外労働があったとしており、長時間労働でうつ病を発症したのが自殺の原因だとして労災と認定した。
妻側によると、男性の帰宅は遅い時だと午前2時ごろになり、休日にも自宅でパソコンを使って仕事をしていたという。妻側は「会社は長時間労働を軽減するなどの具体的な措置を講じなかった」と主張。当時の代表取締役についても「社員の心身の健康を損なうことがないようにする注意義務を怠った」と訴えている。
提訴後に開かれた記者会見で、代理人弁護士が妻のコメントを公表。「ショックと悲しみで頭が真っ白になり、仕事が夫の命を奪ったのだと思いました。関係者にはきちんと責任をとってもらいたいし、夫に謝ってほしい」とする内容だった。同社は「訴状が届いていないため、回答を差し控える」としている。【水谷怜央那】
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