情報・通信企業大手15社の有価証券報告書を読み解き、売上高や収益力、平均給与などを3回にわたり比較する。

対象とするのは、東京証券取引所の上場企業で「情報・通信業」に区分される企業が中心。このうち、テレビ・メディアやゲーム関連などの企業を除き、「電気機器」からIT(情報技術)関連の売り上げが多いNECと日立製作所、富士通、「サービス業」から携帯電話事業を展開する楽天グループを加えて計15社とした。

今回は15社の2023年度の売上高(売上収益)と営業利益、売上高営業利益率をランキング形式で見ていく。

15社全てが増収、2桁成長は2社

売上高ランキングは通信系が上位を占めた。1位はNTT。売上高は13兆3745億円と、唯一10兆円を上回った。以下、2位はソフトバンクグループの6兆7565億円、3位はソフトバンクの6兆840億円、4位はKDDIの5兆7540億円と続く。

情報・通信企業15社の売上高ランキング。日立製作所はデジタルシステム&サービスの売上高(出所:有価証券報告書などを基に日経クロステック作成)

IT系の上位は、5位のNTTデータグループが4兆3673億円、6位の富士通が3兆7560億円、7位のNECが3兆4772億円、8位の日立製作所(デジタルシステム&サービスセグメント)が2兆5986億円といった順番になる。23年度はNTTデータグループが富士通を上回って逆転。富士通とNECの売上高は22年度に約4000億円の差があったが、23年度は3000億円弱にまで接近した。果たして24年度はどうなるだろうか。

売上高の増減率に着目すると、15社全てが増収だった。このうち、2桁成長を記録したのは2社。NTTデータグループは22年度の36.8%増には及ばなかったが、日本や欧州での事業規模拡大などで23年度も25.1%増となった。大塚商会もシステムの構築支援サービスやオフィス用品の通販サービスが伸びて13.5%増と好調だった。

9社が増益、2桁成長も6社と好調

営業利益ランキングも通信系が上位を占めた。1位はNTTの1兆9229億円で、1兆円を上回ったのは同社だけだった。以下、2位はKDDIの9615億円、3位はソフトバンクの8760億円と続く。IT系の上位は、4位の日立製作所が3334億円(調整後EBITA)、5位のNTTデータグループが3095億円、7位のNECが1880億円、8位の富士通が1602億円といった順番になる。

情報・通信企業15社の営業利益ランキング。▲はマイナス、日立製作所はデジタルシステム&サービスの調整後EBITA(利払い・税引き・一部償却前利益)(出所:有価証券報告書などを基に日経クロステック作成)

営業利益の増減率を見ると、9社が増益だった。このうち、2桁増益を達成したのは、日立製作所、NTTデータグループ、NEC、大塚商会、SCSK、BIPROGY(ビプロジー、旧日本ユニシス)の6社だった。IT系は企業のデジタルトランスフォーメーション (DX)需要などで好調が続く。6社のうち、増加率はNTTデータグループが19.5%増と最も高かった。

52.2%減と大幅な減益を記録した富士通は主軸のサービスソリューションセグメントが好調に伸びているものの、ネットワーク機器や半導体パッケージの販売減、事業再編に伴う損失計上や成長投資が減益要因となった。

KDDIとソフトバンクも2桁減益となったが、堅調である。KDDIはミャンマーにおける通信事業のリース債権に対する貸倒引当金の計上、ソフトバンクはQRコード決済大手PayPayの連結子会社化に伴う再測定益(2948億円)を22年度に計上した反動が影響した。両社ともこれらの一時的な要因を除けば実質、増益だった。

22年度に4691億円の営業赤字だったソフトバンクグループは投資先の株価や評価額が上がり、23年度は営業黒字に転換した。楽天グループの営業赤字は4期連続。インターネットサービスやフィンテックのセグメントは順調に拡大しているが、携帯電話事業などのモバイルセグメントが足を引っ張る構図が続く。ただ赤字幅は縮小しており、24年度にどれだけモバイル事業を拡大できるかが注目となる。

営業利益率10%超は8社、IT系で明暗

最後に売上高営業利益率を見ていく。

情報・通信企業15社の売上高営業利益率ランキング。▲はマイナス、日立製作所はデジタルシステム&サービスの売上高と調整後EBITA、同率の場合は小数点第3位で比較した(出所:有価証券報告書などを基に日経クロステック作成)

1位はKDDIの16.7%、2位は野村総合研究所(NRI)の16.3%、3位はソフトバンクの14.4%だった。通信系は総じて高い傾向にあり、NTTも14.4%で4位となっている。10%超は8社だった。

IT系は明暗がくっきりと分かれた。上記のNRIに加え、日立製作所が12.8%、SCSKが11.9%、TISが11.8%と10%超を確保した。これに対してNECは5.4%、富士通は4.3%の水準にとどまっている。

=つづく

(日経クロステック/日経コンピュータ 杉山千織)

[日経クロステック 2024年7月4日付の記事を再構成]

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