タコスやトルティーヤなどで欧州トップシェアのブランド「サンタ・マリア」が日本に上陸した。スウェーデン発祥のブランドで、食品卸のWismettac(ウィズメタック)フーズが皿型のタコスの皮やソースなど約30品目を扱う。まずは輸入食品専門店などで展開し、将来は一般のスーパーも含め4000〜5000店での販売を目指す。
サンタ・マリアはメキシコ料理の中でも米南部のテキサス州で独自の進化を遂げた「テックスメックス」(Tex-Mex、テキサス風メキシカン)と呼ばれる商品群で欧州トップシェアを握る。本場メキシコ料理に比べ小麦粉やひき肉を使うことが多いのが特徴だ。
ウィズメタックフーズはサンタ・マリアのタコスの皮やトルティーヤ、ソースなどの販売を始めた。主に食品スーパーの成城石井や輸入食品を扱う「ジュピター」「PLAZA(プラザ)」などで展開する。タコスの皮「タコシェル」(12枚入り、810円)に加え、具材をのせてそのまま食べられる皿形のタコスの皮「ミニタコタブ」(10枚入り、648円)などが主力商品になる。
集まって食事をする機会の多い若年層やファミリー層が当面のターゲット。6月の発売以降、「計画を上回って売れている」(同社)という。
同社で輸入事業を手掛けるアメニティ事業部の東條有晃マネージャーは「テックスメックスには長いこと可能性を感じていた」と話す。国内でもメキシコ料理を提供する飲食店が増え人気が高まっていることに加え、野菜や肉をバランスよく使うため、健康的な食事としても打ち出せるとの算段だ。彩り豊かな点がSNSとも相性がよいとみる。
富士経済(東京・中央)によると、メキシコ料理を提供する外食店の国内市場規模は2023年に前年比20%増の82億円だった。新型コロナウイルス禍で一時落ち込んだものの、2年連続で2ケタの伸びとなった。
サンタ・マリアはスウェーデン発祥で、現在はフィンランドの食品メーカー、パウリグが世界43カ国で販売しているブランドだ。1991年にタコスの販売に乗りだし、欧州ではテックスメックスでトップシェアを握る。近年はアジア市場の開拓に力を入れており、2018年には香港とシンガポールに進出。年内に韓国とオーストラリアでも販売する予定だ。
テックスメックスはトマトベースのソースとともにひき肉やトマト、アボカドなどの具材と合わせて食べることが多く、スウェーデンでは家庭で楽しむ慣習が根付いている。金曜日には仕事から早く帰宅し、大人も子どもも自分好みに盛り付けをして自由に楽しむという具合だ。
パウリグのペール・ホッランデル国際営業部長は「日本でも手巻きずしなど似た文化があり、相性はいいと考えている」と話す。
ウィズメタックフーズの東條氏は日本での展開について「味一本勝負でいきたい」と自信をみせる。トマトやスパイスをふんだんに使った豊かな味わいがサンタ・マリアの魅力で、国内で広く売られている「オールドエルパソ」に並ぶブランドに育てることを目指す。
まずは輸入食品の専門店や高級スーパーで展開し、一般のスーパーにも販路を広げる。「長期的にはスーパー4000〜5000店での展開が目標」(東條氏)という。
ウィズメタックフーズは北米向けを中心に日本食品の輸出を主軸にしてきた。輸入事業では高級チョコレートなど菓子に強みをもつものの、料理などに使う食材の取り扱いに課題を抱えていた。同社の玉津雅人常務執行役員は「サンタ・マリアは業務用でも可能性があると考えており将来は広げたい」と話す。欧州のトップブランドと手を組み、輸入事業を伸ばす。
(高橋佑弥)
「テックスメックス」、米国で独自進化したメキシコ料理
メキシコ料理は、イタリアンや中華料理などと並んで、米国で最も親しまれている料理の1つだ。その多くが純粋なメキシコ料理というより、米国で独自進化した「Tex-Mex(テックスメックス)」。
スパイスのきいた牛肉とレタスなどをトルティーヤに巻いて食べるタコスや、トルティーヤチップスにひき肉や溶けたチーズをかけたナチョスなどが代表例になる。
テックスメックスは、もとは米南部テキサス州に住むメキシコにルーツを持つ人たちの呼称だった。
米国で手に入りやすい食材でメキシコ風の料理を作っていくうちに進化して定着したのがテックスメックス料理で、米国人の口に合う牛肉や黄色のチーズが頻繁に使われる。トルティーヤは小麦粉製が主流だ。
一方で、伝統的なメキシコ料理はあまり牛肉は使わず、チーズといえば新鮮な白色のチーズが定番だ。トルティーヤはトウモロコシの粉から作る。純粋なメキシコ料理とは異なるが、スパイシーな味付けが食欲をそそるのはテックスメックスも同じ。米国では、レストランだけでなく、自炊やテイクアウトで楽しむ人も多い。
(ニューヨーク=清水石珠実)
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