米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は23日、「政策調整の時が来た」と述べ、次回9月会合での利下げを示唆した。物価上昇(インフレ)が鈍化する一方、失業率の悪化など金融引き締めの副作用への懸念が強まっており、利下げを始める必要があると判断した。
米西部ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウムで講演した。
パウエル氏は「インフレ率は大幅に低下した。労働市場はもはや過熱していない」と説明。インフレ率がFRBの目指す2%に向かっていくとの確信を強める一方、労働市場のこれ以上の冷え込みは望まないとの認識を示した。
そのうえで「政策を調整する時が来た。方向性は明確であり、利下げのタイミングとペースは今後の経済指標による」と述べ、次回9月会合で利下げする考えを示した。
適切な利下げにより、強い労働市場を維持したまま物価を安定させる「軟着陸(ソフトランディング)」は可能との認識も示した。
FRBが最後に利上げしたのは2023年7月会合で、政策金利の誘導目標は5・25~5・5%と01年以来の高水準となった。その後、8会合連続で金利を据え置き、利下げに転じるタイミングを探っていた。
7月の米消費者物価指数の伸び率は前年同月比2・9%と3年4カ月ぶりに2%台に下落。一方、同月の米失業率は4・3%と21年10月以来の水準に悪化している。
FRB内では次回9月会合での利下げが適切になるだろうとの見方が増えている。7月の連邦公開市場委員会(FOMC)でも、大半の参加者が「予想通りの指標が続けば、次回会合での金融緩和が適切になるだろう」との見解を示していた。
FRBが最後に利下げしたのは新型コロナウイルス禍直後の20年3月会合。実際に次回9月会合で利下げすれば、4年半ぶりとなる。【ワシントン大久保渉】
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