テレグラムは秘匿性が高く支持を集めた=AP

通信アプリ「テレグラム」の運営会社のトップがフランスで逮捕された。投稿の監視を義務付けた法律に違反し、児童の保護が不十分だった疑いが持たれている。インターネットにおける表現の自由と安全の両立について考える契機としたい。

仏警察は運営会社のパベル・ドゥーロフ最高経営責任者(CEO)を24日に逮捕した。同氏はロシア出身で、2013年にテレグラムの提供を始めた。暗号技術を利用して秘匿性を高めたのが特徴で、世界で9億人超が使っている。

当局が監視の網をかけにくいテレグラムは香港やタイ、イランなどの民主化運動で使われた経緯がある。一方、テロや麻薬密売、児童虐待にまつわる書き込みを放置し、違法行為を助長しているといった批判も高まっていた。

逮捕を受け、テレグラムの運営会社は「プラットフォーム悪用の責任をその所有者が負うとの主張はばかげている」との声明を出した。通信の秘密を尊重する立場を理解できなくもないが、サービスの公共性を考えれば、責任回避の姿勢は受け入れられない。

重要なのは事業者が自らを律し、運営の透明性を高めることだ。投稿の監視に当たる十分な人員を確保し、削除などの処分の基準も明示すべきだ。利用者からの問い合わせに迅速に応じ、処分の理由を説明することも重要になる。

たとえば米メタは投稿の削除などが恣意的との批判を受け、学識経験者や市民団体の代表などで構成する独立委員会を設けて判断を委ねている。自主的に高い基準を設けることが、当局からの過剰な介入を防ぎ、表現の自由を守ることにもつながると自覚すべきだ。

当局もそうした取り組みを促す必要がある。欧州ではSNSなどの運営事業者に投稿の監視強化を求めるデジタルサービス法の運用が始まり、ほかの地域でも同様の動きがある。容易ではないが、表現の自由に抵触する過剰な介入を避けつつ、安全を確保する方策を粘り強く探る必要がある。

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