世界の株式市場を大きく変動させている半導体産業は、転職市場でも活況で、超売り手市場の「半導体バブル」との呼び声も上がっている。就職情報大手マイナビによると、半導体業界への転職者の平均年収は530万円で、中には10年前から2・2倍に上昇した企業もあった。経験者であれば1000万円超えも珍しくないが、求人への応募数には波があり、同社は「人手不足に悩まされる状況が続いている」と指摘している。
就職情報サイト「マイナビ転職」に掲載された「電気・電子・機械・半導体」業種への転職者を対象とした調査(2024年4月発表)では、平均年収は530万7000円だった。半導体の回路設計などを担う「エンジニア」は経験者が少なく、30代で1000万円超えの可能性もあり、最も平均年収が増えた企業では、10年前の507万円から1122万円に上昇したという。
転職理由(複数回答)は、「給与がいい」が50・8%で最多だった。「会社に将来性、安定性がある」が36・6%、「休日や残業時間が適正範囲内でゆとりができる」が31・8%で続いた。半導体市場は3~4年周期で好不況を繰り返す特徴があるが、長期的には右肩上がりの成長を続けている点に加え、就業環境の良さも評価されている。
「電気・電子・機械・半導体」業種の23年の平均求人件数は、19年比で48・1%増えた。一方で、応募数は9・5%減と低調で、「超売り手市場」となっている。好待遇の求人が増加しているのに、なぜ応募が増えないのか。
マイナビの転職エージェントは、「立地」を理由に挙げる。半導体の製造工程はごく微細なチリの混入も許されず、水がきれいな地方に工場が設けられる傾向がある。このため、転居を伴う可能性があることなどが応募するか否かの懸念材料の一つとなっているという。
国内では、巨額の政府支援を受け、先端半導体の受託製造を担う予定の北海道のラピダスなどを筆頭に、最新技術の確立や供給網の強化に向けて工場の建設などが進むが、労働人口の増加が見込めない中で、若年層の人材獲得が課題になっている。【中島昭浩】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。