大手小売業の2024年2月期の決算が出そろった。値上げの浸透やインバウンド(訪日外国人)の増加で軒並み好業績となった。
ただ足元の消費は力強さに欠ける。実質賃金はマイナスが続き、消費者には「値上げ疲れ」の雰囲気も漂う。機動的な価格戦略と、消費を喚起する付加価値の高い商品開発が各社には求められる。
決算で好調さが目立ったのはコンビニエンスストア業界だ。ローソンは最高益を更新し、セブン&アイ・ホールディングスも国内コンビニ事業で利益を伸ばした。オフィス街に人の流れが戻り、客数や客単価も増えた。
高島屋が最高益を更新するなど高級ブランドを扱う百貨店も好調だった。インバウンドに加え、株高で富裕層も購買意欲は高い。
値上げが相次いだ食品スーパーも、ライフコーポレーションが純利益を27%増やすなど堅調だ。外食業界は値上げをてこに、新型コロナウイルス禍以前の利益水準を上回る企業が増えてきた。
気になるのは足元での消費者の節約志向の高まりだ。スーパーやコンビニで客数や購入点数が減ってきたとの声が聞かれる。賃上げが広く波及しなければ、物価高で生活防衛に動く消費者は増えるだろう。とはいえ、過度な低価格競争は経営体力を削りかねない。
4年ぶりに営業利益が過去最高となったイオンは、プライベートブランド(PB)で一部商品を値下げする一方、高価格帯のチルド食品も拡充している。節約とこだわりという消費の二極化に対し、賢く動くことが重要になる。
円安はインバウンドに追い風となる半面、輸入する原材料やエネルギーのコスト増につながる。人手不足も大きな課題だ。経営の効率化とともに、省人化や人工知能(AI)を活用した需要予測などの戦略投資に踏み出すべきだ。
人口減による国内消費の先細りを見据え、ドラッグストアやスーパーで再編が進み始めた。小売り各社は中長期の成長に向けた戦略づくりも急ぐ必要がある。
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