日本人学校の男子児童が刺された現場付近=中国広東省深圳市で2024年9月19日、岡崎英遠撮影

 深圳市は中国有数の経済都市で、進出する日本企業も多く、深圳日本商工会の会員企業数は372社に上る。日本人学校へ登校中の男児(10)が刺されて死亡した事件を受け、現地に拠点を置く日本企業は、駐在員への注意喚起や情報収集に追われた。

 2022年12月から工場の自動化(FA)に関連する拠点を置く三菱電機は「現地の安全状況について情報収集している。判明次第、中国の各拠点に注意喚起する」(広報)とし、海外の安全情報を全社に周知するリポートを準備する。

 トヨタ自動車は、中国・比亜迪(BYD)との合弁会社が深圳市にある。トヨタ広報は「駐在員に対して大使館から発出されている情報や、現地の日本人学校が出す情報を共有している」と話し、駐在員に注意喚起しているという。

 日本自動車工業会の片山正則会長(いすゞ自動車会長)は19日の定例記者会見で「自動車業界は世界中に根を生やして活動している。政府には在留邦人の安全確保について今まで以上に強化をお願いしたい」と注文した。

 全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀行頭取)は19日の記者会見で「中国政府には再発防止に向けた徹底的な対策に努めていただきたい」と求めた。中国の駐在経験が長かった福留氏は「上海に娘2人を帯同して勤務していたこともあり、このニュースを聞くと胸がつぶれる思いだ。激しい憤りを感じている」と語り、会員各行へ注意喚起し、安否確認体制の構築などを促したと明らかにした。

 中国に多数の駐在員を派遣する商社各社は現段階で渡航禁止などにはせず、駐在員や家族に対し、より一層の注意を呼び掛けた。

 伊藤忠商事は「衝撃的な事件で、精神的なケアが必要になる場合も想定される。現地の声を聞きながら必要な対策をとりたい」。駐在員支援のため人事・総務部の社員を現地へ配置しており、きめ細かに対応する。

 三菱商事は「駐在員には改めて公私とも留意して行動するよう注意喚起した。引き続き社員と家族の安全確保を最優先に、適切に対応していく」としている。【安藤龍朗、大原翔、秋丸生帆、加藤結花】

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