語学教材などで知られる朝日出版社の創業者遺族に解任された前取締役6人が同社を相手取り、解任などを決めた株主総会決議が存在しない確認を求める訴訟を29日、東京地裁に起こした。同社ではM&A(企業合併・買収)の過程で、経営陣側と遺族や金融アドバイザー(FA)側が対立。9月11日に取締役全員が解任された後、新役員が出社しない事態が続いている。

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 朝日出版社の株式は昨春に亡くなった創業者から妻と娘が相続した。合同会社に売る意向が今年5月に示され、経営陣は買収額の安さなどを理由に反対していた。

 株主である遺族が取締役6人全員を解任した理由は、会社保有の遺族宅を売る契約に応じないこととされた。経営陣は妻への対面の意思確認を求めたが、娘とFAが拒否。遺族2人を含む3人が新役員に就いた。

 原告側は訴状で、役員解任や選任の決議への株主同意を示す書面が法律どおりに本店に置かれず確認もできないとし、とくに妻の意思表示は「ない」か「無効」と評価されると主張。新役員が出社せずに旧役員がやむなく業務を続けているとし、出版や財務管理、営業などに責任を持つ取締役全員の解任は不合理だとも訴えた。

 代表取締役を解任された小川洋一郎氏(52)は29日の会見で「訴訟を起こすことで(新役員に)責任に向き合ってもらい、朝日出版社の歩みを止めないようにしたい」と語った。

 遺族の代理人弁護士は21日、妻への意思確認はFAや司法書士とともに対面で行ったとし、総会決議は「当職らのサポートで適法に手続きを完了した」と取材に回答した。

 遺族側のFAも取材に対し、株主総会の決議は同意書や議事録も閲覧して確認したとし、混乱の原因は前経営陣が株主の意思に同意せず、新代表取締役の代理の人物への引き継ぎに応じないことなどだと説明している。(藤田知也)

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