政府は30日、経済分野の主要政策を議論する「新しい資本主義実現会議」を首相官邸で開き、政府と経済界、労働界の代表による政労使の会議を近く開催することを確認した。石破茂首相が掲げる2020年代までに最低賃金を全国平均で時給1500円に引き上げることについて議論する予定で、首相は「衆院選でも賃上げを求める強い声があった。政権として最優先で取り組む」と意欲を示した。
石破政権として初会合となった今回は、近く取りまとめる経済対策に向けた政府の重点施策が示された。中小企業の賃上げ環境整備のため、労務費の価格転嫁に向けた下請け法の改正検討や人工知能(AI)やロボットの導入など省力化投資を推進するための具体的プランの策定などを行うとした。6月の実行計画の改定で決まったアニメや映画などのコンテンツ産業の支援も継続する。
「新しい資本主義」は「成長と分配の好循環」を目指して岸田文雄前首相が提唱した。岸田政権の経済政策を引き継ぐと宣言した石破首相は「新しい資本主義にさらに加速度をつける」としており、実現会議もそのまま継承。担当大臣は首相側近の赤沢亮正経済再生担当相を任命したものの、経団連の十倉雅和会長や連合の芳野友子会長ら構成メンバーは変えなかった。
岸田政権の看板政策の会議体を事実上の「居抜き」として継続したため新味に欠けていることは否めない。
今回示された重点施策はいずれも岸田政権時代に決まった政策がほぼそのまま並び、肝心の石破首相が打ち上げた20年代の最低賃金1500円への引き上げも実現会議ではなく、政労使の会議での議論が主体となる。
会議後、経団連の十倉会長は記者団に「乱暴なことをやると、路頭に迷う人や経営者も(出て)困る。環境の整備が大事だ」と慎重な議論を求めており、最低賃金の引き上げの議論も難航が予測される。【古川宗】
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