適正飲酒の啓発活動についての記者会見に出席したサントリーの鳥井信宏社長(右)=6日、東京都千代田区

サントリーは6日、2025年1月に企業など法人向けに新たな適正飲酒セミナーを始めると発表した。従来の啓発セミナーを刷新し、動画で酒に関する知識や飲酒リスクを伝えるほか、蒸留所のバーチャル見学や飲み比べなども提供し酒の魅力を知ってもらう。30年までに国内で累計20万人への実施を目標とする。

名称は「ドリンクスマイル」セミナーで、企業のほか、自治体、大学など向けに実施する。1回の開催時間は約45分で、無料で提供する。まず国内で実施し、今後は現地のガイドラインや規制などに基づき、海外での開催も検討する。

セミナーは2部構成で、前半は動画視聴のほか、アルコールに対する体質を簡易的に測る「パッチテスト」を実施する。後半は体験コンテンツで、缶ビールに付けると注ぐ際にきめ細かな泡を作る「神泡サーバー」の体験やVRゴーグルを使った蒸留所見学、酒類・ノンアルコール飲料の飲み比べなど4つから選んでもらう。

サントリーは11年から企業など対象に飲酒啓発セミナーを開き、23年まで累計3万6000人が参加した。6日に開いた記者会見で鳥井信宏社長は「これまでは適正飲酒のみに視点を置いていた。新設セミナーでは飲むことが悪でなく、酒類・ノンアル全般の魅力を伝えたい」と話した。

酒類各社も適正飲酒の啓発に取り組んでいる。アサヒビールは9月に未成年飲酒や飲酒運転などの撲滅に向けて専門部署を新設。12月には日本自動車連盟(JAF)と連携し、アサヒビールミュージアム(大阪府吹田市)でJAF会員向けに飲酒状態が体験できるイベントを開く。

キリンホールディングスは今春から一般企業向けの適正飲酒セミナーを始めた。クラフトビール大手のヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)は適正飲酒を促す目的であえて飲みづらくしたグラス「ゆっくりビアグラス」を開発し、SNSでも話題を呼んだ。

飲酒に伴うリスクを周知し健康障害を防ぐため、厚生労働省は2月に初の指針「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表した。適正飲酒を促す観点から各社の商品戦略にも注目が集まる。大手ではアサヒやサッポロビールが今後8%以上の缶チューハイの新商品を発売しない方針を決め、キリンビールも検討している。

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