私鉄大手15社の2024年4〜9月期連結決算が14日出そろい、東急や近鉄グループホールディングスなど11社が25年3月期通期の純利益予想を上方修正した。円安を追い風に訪日客の鉄道・ホテル利用が増える。新型コロナウイルス禍からの旅客回復には天井感もあり、オフィス開発など不動産事業をどれだけ伸ばせるかが課題だ。
近鉄GHDは同日、25年3月期の連結純利益が前期比6%減の450億円になりそうだと発表した。支払利息や人件費・原価の増加で最終減益を見込む一方、奈良や京都を訪れる訪日客増が鉄道やホテルの収益を押し上げる。
笠松宏行取締役常務執行役員は「訪日客の多い奈良駅では4〜9月の収入が前年同期比30%増えた」とし、8月の台風や南海トラフ地震臨時情報による運休の影響を補った。売上高に相当する営業収益も10%増の1兆7900億円と、同100億円上振れする。
通期の純利益予想の上振れが相次いだ。大手15社のうち7割に当たる11社が上方修正し、上振れ幅の合計は458億円と純利益全体の7%に当たる。全体の6割に当たる9社が通期の最終増益を見込み、13社がコロナ禍前の19年3月期実績を上回る。
各社に共通する好調の要因は、円安に伴う訪日観光客の鉄道・ホテル需要の回復だ。東急は25年3月期の純利益が前期比16%増の740億円と、従来予想から140億円引き上げた。今期の運輸収入は3%増の1497億円で、19年3月期を6%上回りそうだ。
西武ホールディングスの今期純利益は3.1倍の840億円を見込む。国内ホテルのRevPAR(売上高を販売可能な部屋数で割った数値)は11%増の1万5024円と、コロナ禍前を約2600円上回る。東武鉄道も東京スカイツリーなどレジャー需要が伸びる。
半面、物価高による日本人の旅行意欲の減退もあり、旅客の上積みには天井感も見えつつある。松井証券の窪田朋一郎氏は「ホテルの単価や稼働率も上限に近づいている印象で、コロナ後の急回復という局面は峠を越えつつある」と指摘する。旅客動向に左右されにくい収益基盤の「仕込み」の巧拙が来期以降の明暗を分けそうだ。
阪急阪神ホールディングスは阪急電鉄がJR大阪駅北側で参画する大型開発「グラングリーン大阪(うめきた2期)」の一部街区を9月に先行開業した。25年3月には残りの大部分も開業することから「来期以降に収益が寄与する」(大塚順一執行役員)。
東急が7月に開業した複合ビル「渋谷アクシュ」(東京・渋谷)は通期で10億円の利益を生むと見込む。藤原裕久取締役専務執行役員は「開業時点で入居がほぼ完了しており非常に好調だ。利回りや賃料の水準も当初の想定より数ポイント上振れしている」と話す。
10月に上場した東京地下鉄(東京メトロ)は売上高の9割を運輸事業が占めており、同2割ほどの東急などに比べて鉄道以外の稼ぐ力が見劣りする。山村明義社長は「都心の駅近や駅直結型の不動産でビジネスチャンスを発見していく」と話す。
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