リクルートが12日発表した3月のアルバイト・パート募集時平均時給は、三大都市圏(首都圏、東海、関西)で前年同月比45円(3.9%)高い1188円だった。事務と専門職は過去最高額を更新した。春季労使交渉で大幅な賃上げが進む中、新年度に向けたアルバイト採用が本格化。時給の上昇に弾みがついている。
求人媒体「タウンワーク」などの掲載情報を集計した。時給は現在の方法で集計を始めた2018年3月以降で最高だった2月(1192円)に次ぐ水準だった。上昇率も同基準で最高の2月(4.4%)に次いだ。募集数も前年を大きく上回った。
春季労使交渉では大幅な賃上げが進む。流通や外食などの労働組合が加盟するUAゼンセンの集計では、パートで6.11%(4月1日時点)の賃上げを実現。正社員の伸びを上回り、格差の是正が進んでいる。
正社員と同等の待遇を前面に打ち出す企業も出てきている。アルバイト・パートの新規獲得にも、時給を引き上げて魅力を高める必要が一段と強まっている。
新年度は学生の卒業などでアルバイトやパートの従業員が切り替わる時期だ。コンビニエンスストアなどは年間を通して必要な人材を確保するため、大量の募集をかけている。
少子化による学生の減少が続き、人材確保の競争は激しい。ジョブズリサーチセンターの宇佐川邦子センター長は、初心者らの定着率を高めるために「長期的なキャリアアップを見据えた育成も重要になってきている」と指摘する。
職種別では「専門職系」が66円(5.0%)高の1388円、「事務系」が52円(4.3%)高の1272円で、ともに最高額だった。専門職は医療や介護関係が上昇をけん引した。看護師は17.3%高い2082円、介護スタッフは4.6%高の1262円だった。
新年度のスタッフ切り替えに際し、人々の基本的な生活に欠かせない「エッセンシャルワーカー」は欠員を防ぐために大幅な賃上げが避けられないようだ。「製造・物流・清掃系」は2.8%高の1188円と、やや伸び悩んでいる。
ディップが同日発表した3月のアルバイト・パートの全国平均時給は、前年同月比123円(9.9%)高い1368円だった。求人情報サイト「バイトル」に掲載した求人件数も同11.4%増えた。
同社の井上剛恒執行役員は「訪日客でにぎわうリゾート地や半導体など大型工場が進出した地域など、大都市以外でも賃上げが目立つ」と語る。エン・ジャパンが同日発表した三大都市圏の集計でも36円(2.9%)高の1288円となった。
総務省の2月の労働力調査によると、アルバイト・パートは前年同月比で42万人多い合計1494万人だった。雇用者(役員除く)の26%を占める。企業は若者や主婦、高齢者の新規就労者開拓を進めているが、不足感は解消しない。
今後は大型連休向けの募集が本格化する。引き続き前年を上回る時給水準が続くとの見方が一般的だ。(桝渕昭伸)
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