ギフト専用の電子商取引(EC)サイトを手掛けるギフトモール(東京・中央)はスパークス・アセット・マネジメントやヤマダホールディングスなどから総額50億円を調達した。ギフトや体験の領域で新規事業創出に向けたM&A(合併・買収)や人材採用などに投じる。藤田真裕最高経営責任者(CEO)に今後の戦略を聞いた。
――資金調達の狙いを教えてください。
「M&Aとエンジニアなどの採用に充てる。利用者がギフト選びなどで使いやすいサービスを構築するために開発や新規事業開発に注力する。これまでに3社を買収してきた実績があり、M&Aの専門チームもつくって推進していきたい」
「株主である事業会社とも連携を進める。ヤマダホールディングスと資本業務提携し、電化製品のギフトカタログを作成した。相互の顧客基盤を活用したECの強化や店舗網、物流網を使ってオンラインとオフラインを連動させていく」
――国内のギフト市場はどのように伸びていますか。
「ギフト領域は11兆円の市場があるが、まだEC化率は低い。対面など店舗で購入する人が多く、ネットでの購入者は増え続けている。我々はギフトや体験の領域でプラットフォームを提供しており、自社サービス全体の年間流通額は約200億円となった」
――競合他社に比べた強みは何でしょうか。
「データを駆使してマッチングの精度を上げているほか、ギフト用にカスタムできるなど価値の高い購買体験を提供できるように意識している。『ギフトモール』などサービス全体で月間の訪問者数は3600万人にのぼる」
「ギフトを渡す相手や用途についてどのような条件で検索し、商品を閲覧して最終的に購入したのかというデータを個人情報を除いて集めている。商品を薦める機能の精度を上げ、より簡単に探しているギフトを購入することができる」
――今後の成長戦略を教えてください。
「ギフトや体験の領域でプラットフォームを拡大し、ライフ・タイム・バリュー(顧客生涯価値)の高いサービス群をつくっていく。そのためにM&Aなどを通じて新規事業を増やしていきたい。25年には宿泊分野でサービスを始めることも検討している」
「今回調達した資金と借り入れも含めて、M&Aに50億円超を投じる予定だ。社数としては5〜10社を想定している。ギフト分野のECはサービスや機能が分散している印象がある。既存事業の強化のほか、新規事業も含めていろいろなサービスを束ねて30年までに流通総額800億円を目指したい」
――海外展開はどうなりますか。
「インバウンド(訪日客)向けの体験予約プラットフォームを手掛けており、海外売上比率は約2割を占める。今後は日本以外の国の体験を予約できるようにして、東南アジアなど3〜5カ国でサービスを展開する。長期的に利益を出していく体制をつくるという観点では、外貨建ての売り上げはとても重要だ」
EC化率の底上げがカギに
ギフト市場は年々拡大しているが、EC化率を伸ばすことが求められている。プレゼントは対面の店舗で実物をみて決めたいという消費者も多い。ギフトモールでの平均単価は7000円台、主要な顧客層は20〜40代だ。
経済産業省によると物販分野での消費者向けECサービスの市場規模は23年に14兆6760億円だった。前年から5%増えたが、EC化率は1割に満たない。新規の利用者を開拓するため、使いやすさや商品カテゴリーの拡充のほか、失敗しないギフト選びといった購買体験を認知させる必要がある。
(小山美海)
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