工作機械の松浦機械製作所(福井市)は生産体制を再編した。武生工場(福井県越前市)に新棟を建設し、同工場と本社工場(福井市)の組み立て工程を集約した。スペースは武生工場内の既存棟に比べて約2倍で、生産能力は従来比2割増えた。成長が見込める航空宇宙産業向けで大型機の受注機会の損失を防ぎ、収益の拡大につなげる。
「今までにない広々としたスペースを取ったことで多様な注文に対応できるようになる」。3日に開いた新棟の竣工式で松浦勝俊社長はこう述べた。新棟は縦145メートル、横22.5メートルで、隣接する既存棟と比べると2倍強広い。100メートル超の広さながら屋内中央に柱がない設計を採用し、スペースを有効活用できる。
欧州の航空機やロケット向けの工作機械需要は高い。求められる機能も増えており、機械の大型化が進んでいる。大型機は全長6メートル、幅4メートル、高さ3〜3.5メートルと、従来型の中型機よりもそれぞれ2〜6割程度拡大している。
松浦機械製作所の悩みは工場のスペースに限界があり、大型機を同時に一定量生産できないことだった。広い工場を設けたことで受注を取りこぼさずに済む。松浦社長は「逃していた需要をつかめば2割ほど売り上げを積み上げる余地はある」と説明する。
拠点の集約で人の移動がなくなることに伴う効果も見込む。松浦社長は「これまでは注文に応じて本社工場と武生工場を移動する従業員もいた。生産棟を集約することで効率を上げる」と語る。組み立て工程を武生工場に移したあとの本社工場は、部品の生産とそれを保管する拠点として使う。
日本工作機械工業会(日工会)が11月20日に発表した工作機械受注総額(確報値)は前年同月比9%増の1225億円で3カ月ぶりにプラスに転じた。けん引役はアジアで松浦機械製作所が強い欧州や米国向けは勢いを欠く。
同社の2023年12月期の売上高は177億円。松浦社長は「24年12月期は売り上げが前期から1割ほど落ちる見通し。25年12月期も戻らない」とみる。
景気に左右されやすい工作機械の需要の波は大きい。やや厳しい状況にある現在のうちに次の回復期に備えて競争力を蓄えられるかが、松浦機械製作所の成長を左右する。
(津兼大輝)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。