積水ハウスは「循環する家」の構想を発表した

積水ハウスは4日、再生可能な部材のみでつくる戸建て住宅を2050年をメドに販売する目標を発表した。現状は一部の部材を除いて再利用ができず、解体時に廃棄されているという。全国にある廃材などの回収拠点を生かし、サプライヤーと部材の共同開発を進める。将来、部材の調達が難しくなるリスクを避ける効果も見込む。

「現状、住宅は使い終わったらすべて捨てるというシステムになってしまっている。このつくり方を見直す時が来ているのではないか」。積水ハウスの井阪由紀・環境推進部長は同日、東京都内で開いた記者会見で強調した。同社の住宅には3万以上の部材が使われているが、現状は一部を除き再利用されていない。

他の業界では材料を再利用するサーキュラーエコノミー(循環経済)の取り組みが先行する。飲料メーカーなどはペットボトルの再利用を広げている。自動車産業でも欧州などでは部品の再利用を進める「カー・トゥー・カー」を目指す動きが出てきた。

住宅は部材の数が多いことに加え、使い終わった部材を回収する仕組みが十分に確立されていない。そのため他の業界に比べて後手に回っていた。

再生部材のみでつくる住宅「循環する家」の構想を発表する積水ハウスの仲井社長(4日、東京都港区)

「2050年までにはなんとか、ハウス・トゥー・ハウスを実現したい」。仲井嘉浩社長は記者会見で意気込んだ。ただ「実現へのハードルが非常に高い」(仲井社長)のが現状だ。

課題となるのは部材を製造するサプライヤーとの協業体制をどう構築していくかだ。既にブリヂストンとは給水給湯用の配管で、大建工業とは畳の下地材として使われる木質ボードで、再生利用を開始している。今後は数百社にも及ぶサプライヤーと同様の取り組みを進める必要がある。

部材の回収には、積水ハウスが全国21カ所で運営している「資源循環センター」を活用する。既に1日約1000件の新築の工事現場から出た廃棄物については、年間3万7000トンほど回収してリサイクルできているという。今後は新築の工事現場だけではなく、既存住宅の解体時に発生する廃棄物についても回収したい考えだ。

住宅の部材を再利用できるようになれば、部材調達に伴うリスクの低減にもつながる。近年は木材などの資材価格が高騰しているほか、輸入資材は地政学リスクで調達が困難になる可能性もある。部材の再生によって調達網を自社内で完結できれば、こうしたリスクを避けつつ、原価を抑えながら、住宅を建てやすくなる。

再生可能な部材のみでつくる資源循環型の戸建て住宅は価格が高くなると予想される。脱炭素住宅のように、普及に向けて補助金など公的な取得支援のあり方についても議論が必要になるだろう。

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