IHIは8日、2025年3月期の連結最終損益(国際会計基準)が600億円の黒字(前期は682億円の赤字)になりそうだと発表した。航空エンジンや産業機械の採算が上向く。
売上高に相当する売上収益は21%増の1兆6000億円、営業損益は過去最高となる1100億円の黒字(前期は701億円の赤字)を見込む。出資する米国の航空エンジン共同開発プログラムの品質問題で業績が悪化した「航空・宇宙・防衛」部門は、増収を伴う形で回復する。同部門の売上収益は約2倍の5400億円、営業損益が660億円の黒字(前期は1028億円の赤字)になりそうだ。
民間向け航空エンジンは旅客需要が戻り、新造エンジンやスペアパーツの売り上げが伸びる。政府の防衛予算の増加を背景に、ミサイルや戦闘機エンジンを手がける防衛分野も需要が拡大する。
併せて、31年3月期の防衛事業の売上収益見通しを23年3月期の2.5倍の2500億円規模に伸ばす計画も明らかにした。
「産業システム・汎用機械」部門の営業利益は220億円と前期比73%伸びる。ガソリン車のエンジンに使うターボチャージャー(過給機)で、前期に計上した構造改革費用(約60億円)がなくなる。立体駐車場なども資機材コストの上昇を販売価格への転嫁で補う。
想定為替レートは1ドル=140円と、前期に比べ5円以上の円高を想定。為替要因は70億円の営業減益要因になる。
4月に明らかになった子会社IHI原動機(東京・千代田)での船舶用エンジンのデータ改ざんについて、井手博社長は同日の決算説明会で「ステークホルダーの信頼を裏切り、おわび申し上げる」と謝罪した。「(過去の不正を受けて)コンプライアンス意識向上を進めてきたが不十分だった。抜本的で実効性のある再発防止策に取り組んでいく」と説明した。今期業績への影響は精査中とした。
今後は、電気自動車(EV)で不要になるターボチャージャー事業などの構造改革が焦点となる。1年で100億円程度の費用が数年間発生すると見込んでいる。井手社長は「今年度に構造改革の議論を加速させる。エグジット(売却)も視野に入れながら見直す」と話した。
同日発表した24年3月期の連結決算は、売上収益が前の期比2%減の1兆3225億円だった。
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