資生堂が10日発表した2024年1〜3月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が32億円の赤字(前年同期は86億円の黒字)だった。免税品の販売事業が在庫調整などの影響で落ち込んだ。早期退職に伴う構造改革費用約180億円を、予定していた同4〜6月期から前倒しで計上したことも響いた。不振だった日本や中国事業は回復した。

取引終了後の発表を受け、私設取引システムでは株価は一時、10日の東証終値比10%安まで急落した。その後は約6%安で推移している。事前の純利益の市場予想平均の52億円を下回ったことが嫌気された。資生堂は「構造改革費用を前倒し計上したためで業績は想定以上で推移している」として、24年12月期通期の業績予想は据え置いた。

24年1〜3月期の売上高は前年同期比4%増の2494億円だった。

赤字の背景には長引く構造改革がある。同社は20年12月期に、19年12月期の最高益から一転、116億円の最終赤字に転落した。21年に日用品事業を売却するなど改革を断行。24年2月には国内で早期退職者1500人の募集に踏み切った。日本事業の従業員数の1割強に相当する1477人が応募した。これに伴い、関連費用を計上した。

空港での免税品販売などトラベルリテールの大幅減益も響いた。24年1〜3月期の同事業のコア営業利益は30億円と60%減った。中国・海南島や韓国での転売を巡る規制強化による流通在庫の調整が響いた。東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出による買い控え影響も重なった。連結全体のコア営業利益は10%減の113億円と低迷した。

一方で日本や中国などの主力事業は改善傾向にある。コア営業損益は日本が66億円の黒字(前年同期は16億円の赤字)、中国が1億円の黒字(同21億円の赤字)に回復した。1〜3月期では3年ぶりの黒字だ。

日本では注力する化粧品の高価格帯ブランド「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」などが伸びた。インバウンド(訪日外国人)売上高は実質ベースで40%超の増収だった。藤原憲太郎社長最高執行責任者(COO)は「コストを減らし続けないといけない悪循環に陥ることなく、成長戦略が結果につながった」と話した。

中国は合理化が寄与した。不採算店舗を減らし、富裕層に向けたプロモーションに集中するなどマーケティング費用を抑えた。一連の原発処理水放出の影響を補った。

24年12月期の売上高は前期比3%増の1兆円、純利益は1%増の220億円を見込む。今後は、日本や海外での継続的な採用抑制などでコスト構造を全般的に見直す。通期では早期退職分も含めて300億円の構造改革費用の計上を予定し、日本では24年内に全商品数の2割を削減する方針も掲げる。

構造改革の効果については、今期に150億円、25年12月期に250億円のコア営業利益を押し上げる効果を見込む。売上高の約半分を占める日本と中国の業績が底入れ傾向にあるだけに、構造改革を早期に終了できるかが焦点になる。

(今村桃子)

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