記者会見するじもとHDの鈴木社長(14日、仙台市)

じもとホールディングス(HD)の鈴木隆社長(仙台銀行頭取)は14日の記者会見で、公的資金200億円の返済が9月末に控える同HD傘下のきらやか銀行を巡り、再建に向けて返済延期以外の手段は「極めて難しい」と述べた。

返済延期を前提に再建計画を立てる姿勢を改めて示した。きらやか銀は新たな経営強化計画を6月末をめどに再提出し、金融庁との交渉に臨む。

「地元企業などから返済資金を調達することは赤字で厳しい。公的資金の返済期限の延長が有力な方法だ」。じもとHDの川越浩司会長(きらやか銀頭取)も同日の記者会見でこう強調した。

じもとHDは国との協議を大型連休明けから始めた。過去に10年間の返済延期を国に認められたあおぞら銀行の事例を参考に、延期が可能となる条件を詰める。

きらやか銀行は国が持つ200億円の優先株の普通株転換(返済)期限が2024年9月に迫っている。リーマン・ショックの余波を受けた09年に受け入れた公的資金にあたる。

同行は24年3月期の単体決算で最終損益が244億円の赤字となった。与信関係費用を大幅に積み増し、2期連続の最終赤字。取引先の再生支援費用の前倒し計上などによるもので、公的資金の9月返済は困難となったと説明する。

24年3月期の自己資本比率は7.7%だった。23年3月期に続き8%を割り込んだ。このまま200億円を返済すれば自己資本比率が4%台まで低下する水準だ。

金融機関の健全性を保つための「バーゼル規制」は金融危機に備え、国際統一基準行に8%以上の自己資本比率を求める。

日本の地銀など地域金融機関は25年3月末に適用する。新しい資本規制はリスク評価が現在の算出方法と異なるため一概には言えないものの、自己資本比率8%割れは不安定要因の一つだ。

そもそもきらやか銀には東日本大震災の被害を勘案し、12年にも追加の公的資金100億円が注入された。新型コロナウイルス禍で再度の経営不振に陥ると、23年9月にはさらに180億円が注入されている。

苦しい経営状況の一方、25年3月期の純利益は1億円を予想する。「大口の貸倒引当金はほとんど対処している。今後はコア業務と有価証券運用で稼げるのではないか」(川越氏)とみる。

記者会見するきらやか銀行の川越頭取(14日、山形市)

同じくじもとHD傘下の仙台銀行側には懐疑的な見方も広がる。「株主や取引先からは『なぜじもとHDできらやか銀と組む必要があるのか』との声が多く寄せられている」(仙台銀幹部)

仙台銀は24年3月期まで12期連続の黒字だ。今後、きらやか銀が不安定な状況が続けば「仙台銀の足を引っ張っている」との声が大きくなる可能性がある。

現在のところ「SBIホールディングスのもとにあるじもとHDからきらやか銀が切り離されることはあり得ない」との声が多い。SBI側も支援する姿勢を鮮明にする。

それでもきらやか銀の公的資金返済の交渉に暗雲が垂れ込めれば、東北地銀の力関係が一気に流動化するのは必至だ。

(今井秀和)

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