決算記者会見に臨む八木社長㊧と森副社長㊨(14日、福井市)

フクビ化学工業は14日、2024年3月期の期末配当を直近予想から2円50銭積み増して15円50銭にすると発表した。年間配当は31円となり、前の期から9円増える。同日発表した通期の純利益が上振れし、記念配除く配当性向を30%にする。28年3月期を最終年度とする中期経営計画達成へ初年度は計画通り進んだとして、今期から成長投資を本格化させる。

24年3月期の連結売上高は、前の期比微増の397億円、純利益は同15%増の17億円だった。高性能断熱材などの高付加価値製品が評価され、粗利益率が前の期から1ポイント上昇した。新商材の環境配慮型商品も1年目の売り上げ計画を達成した。28年3月期の目標である売上高450億円、営業利益28億円に向けて一歩進んだ形だ。

中期経営計画初年度である前期の成果について、14日の決算記者会見で八木誠一郎社長は「既存の成功体験を探る状態から社内が変わりつつある」と述べた。住宅向け建材は新築着工件数の減少が続いており、同社の既存領域も縮小している。伸びしろがある分野への提案強化やアップサイクルなどの新しい価値への訴求に一定の手応えを示した。

中計達成に向け、今期からは計画に定めた全105億円の成長投資を本格的に実行する。建設を予定する新工場のデザイン検討をはじめるほか、4月からは研究チームを立ちあげ、27年3月期までに約50億円の投資を検討する。引き合いの高い商品の機能性を強化し、工場や倉庫向けに親水性の高い天井材やリフォーム向けの断熱材などの販売をさらに増やしていく計画だ。

フクビにとって今回の中計は30年を視野に入れた事業体制の変革へ重要な期間との位置づけだ。社内でも常に中計に基づくKPI(重要業績評価指標)やアクションプランを意識させ、足場は固まりつつある。

28年3月期までの目標は自己資本利益率(ROE)6%、営業利益率6.2%を掲げている。24年3月期は同4.9%と4.4%。前の期から改善は進むものの、足元の数値は高いとは言えない。6月から社長に就任する森克則副社長は「新規分野への販売はまだ弱い部分がある」とし、営業人材の強化を今期のテーマの1つに挙げた。

25年3月期の通期予想は、売上高が前期比3%増の408億円、純利益が1%増の17億円。営業利益率は前期比横ばいを見込む。中計の目標達成に向け、成長速度をさらに引き上げられるかが焦点だ。

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