国内ビール大手3社の2024年1〜3月期の連結決算(国際会計基準)が14日出そろった。23年10月のビール減税以降、国内のビール需要が拡大し、値上げも浸透したことから、3社とも増収だった。本業のもうけを示す事業利益はアサヒグループホールディングス(GHD)が2年連続の過去最高を更新した。
14日発表したアサヒGHDの売上高にあたる売上収益は、前年同期比11%増の6166億円と、4年連続で過去最高を更新した。国内の酒類事業は5%増の1664億円となり、年始や歓送迎会の宴会需要が回復して業績をけん引した。主力ビール「アサヒスーパードライ」ブランドの販売数量も6%伸びた。
国内市場では、発泡酒を除くビールの販売数量は9%増と伸びている。キリンホールディングス(HD)では傘下のキリンビールの売上収益が3%増の1406億円だった。主力ビール「一番搾り」ブランドの販売数量が10%伸びた。サッポロホールディングス(HD)の国内酒類の売上収益も3%増の557億円で、主力ビール「黒ラベル」ブランドの数量が16%伸びた。
事業損益では明暗が分かれた。アサヒGHDは事業利益が12%増の362億円となり、前年同期に続いて過去最高を更新した。各地域の事業利益は日本が10%、欧州が20%それぞれ増加した。事業利益のうち、6割を海外で稼いでおり、為替の円安傾向も12億円の増益要因になった。
キリンHDは2%減の330億円となった。4月に発売した17年ぶりビール新ブランド「晴れ風」の販促費がかさみ、キリンビール単体では25%の減益だった。サッポロHDも海外酒類事業の赤字幅が拡大するなど、事業損益が37億円の赤字(前年同期は29億円の赤字)だった。
3社とも24年12月期通期の業績予想は据え置いた。大麦など原料の多くを輸入品に頼る各社にとって、コスト対応力が今後の焦点になる。こうしたコストアップにより、同期の事業損益は、アサヒGHDが前期比200億円程度、キリンHDは約350億〜370億円、サッポロHDは60億円それぞれ悪化すると見込む。
国内ではアサヒやキリンが5月から飲料事業の値上げを実施している。今後はコスト削減の取り組みに加え、ビールの追加値上げに踏み込めるかが収益改善のカギを握る。
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