エーザイは15日、7月にアルツハイマー病治療薬「レカネマブ(製品名レケンビ)」を中国で発売すると発表した。現地のヘルスケア大手と提携し普及拡大につなげる。レカネマブの販売は米国、日本に続き3カ国目となる。販売地域を広げ2025年3月期のレカネマブの売上高を565億円と予想する。
レカネマブはエーザイが米バイオジェンと共同開発した。アルツハイマー病の原因物質のひとつとされる「アミロイドベータ(Aβ)」と呼ぶたんぱく質を患者の脳内から取り除く。症状の進行を緩やかにする効果を臨床試験(治験)で証明した世界で初めての薬だ。
24年1月に中国国家薬品監督管理局(NMPA)から薬事承認を取得した。レカネマブの投与対象となる軽度認知障害(MCI)の人などは中国で1700万人(24年時点)と推定されている。
レカネマブを使用するには、陽電子放射断層撮影装置(PET)などの事前検査が必要だが、中国ではPET施設が普及しておらず、当面は投与できる患者の数は限られる見通しだ。まず自費診療での治療を希望する人を対象に治療を進め、民間保険会社との治療プログラムの開発を進める。
内藤晴夫最高経営責任者(CEO)は「中国では日米と異なるパスウェイの構築が必要で、その特徴は産業連携とデジタルの活用だ」と話す。エーザイは20年から中国で現地ネット通販大手の京東集団(JDドットコム)と組み、オンライン診療サービス「銀髪通」を始めている。同サービスを通じて、患者にレカネマブ治療に関連した検査や診療、投与ができる医師や施設を紹介する。
エーザイによると、銀髪通のサービスの利用者数は40万人を超え、6000人の医師が登録している。同サービスは「認知症の治療・診断を専門とするプラットフォームになっている」(エーザイ)という。
今後はアジアを中心に世界市場を開拓する。国際アルツハイマー病協会は、現在世界で5000万人いるとされる認知症患者は、50年に1億5000万人まで増えると推計する。アルツハイマー病は認知症患者の6〜7割を占める代表的な疾患で、新薬への期待は高い。
薬価とともに新興国での普及拡大の壁となる事前検査では、血液から簡便にAβの蓄積を調べる検査技術の開発も急ぐ。内藤CEOは「血液検査がレカネマブ普及拡大のゲームチェンジャーになる」と話す。今後、インドなどアジア諸国にも広げる考えで、2032年度までに世界で売上高1兆円超を目指す。(黒瀬泰斗、坂野日向子)
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