イラン大統領「敵のイスラエルに教訓を与えた」成果強調
イランは13日から14日にかけてイスラエルに向けて多数のミサイルと無人機を使った大規模な攻撃を仕掛け、イスラエルはアメリカなどの協力も得てそのほとんどを迎撃したとしています。
イランはこの攻撃について今月1日にシリアにあるイラン大使館がイスラエルの攻撃を受け、革命防衛隊の司令官らが殺害されたことへの報復だとしていて、ライシ大統領は声明で「敵のイスラエルに教訓を与えた」として成果を強調しました。
一方で革命防衛隊のサラミ総司令官は「作戦は限定的でイスラエルがわれわれの大使館への攻撃で使った能力と同じレベルに抑えた」と強調し、これ以上の事態の悪化は意図していないという姿勢をにじませました。
イスラエル前国防相「代償を支払わせる」
これに対し、イスラエルは14日、戦時内閣による閣議を開き、今後の対応を協議したとみられます。イスラエル政府は、イランからの攻撃があれば反撃すると繰り返し警告してきましたが、今のところ閣議の内容は明らかになっていません。
戦時内閣に入っているガンツ前国防相は「適切な時期に、正しい方法で、イランに代償を支払わせる」と述べていますが、いつどのような反撃に踏み切るのかは明らかにしていません。
また、ガラント国防相も声明を発表し、「イランの脅威に対抗するため、戦略的同盟を立ち上げるときだ」として、各国と協力してイラン包囲網を構築するべきだと主張しています。
ガザ地区でも緊張続く
一方、ガザ地区の状況について、現地の保健当局は14日、イスラエル軍による攻撃で過去24時間にさらに43人が死亡し、これまでの死者は、3万3729人になったと明らかにしました。イスラエル首相府は14日、戦闘の休止と人質の解放をめぐる交渉について「イスラム組織ハマスが仲介者が示した提案を拒否した」と発表しました。
一部のイスラエルのメディアは、交渉が進展しない中、イスラエル軍が今後ガザ地区南部の150万人近くが身を寄せるラファへの地上作戦に踏み切るという見通しを伝えていて、ガザ地区での緊張も続いています。
国際社会ではガザ地区の戦闘に加え、イランとイスラエルとの対立で中東情勢がさらに緊迫することへの懸念が広がっています。
<15日の動き>
イスラエル軍 無人機やミサイル迎撃の映像公開
イスラエル軍は、イラン側から発射されたミサイルや無人機を迎撃した戦闘機からとらえたとする映像を公開しました。映像には、無人機やミサイルだとする黒い物体に照準が合わされたあと、物体が次々に爆発する様子が写されています。
イスラエル軍は「数十機の空軍の戦闘機が戦略的パートナーの国々と協力して領空を守る任務にあたった」としています。
一方、イスラエル南部のアラドではミサイルや無人機の破片が落下したとみられていて、自治体が公開した写真からはミサイルの部品のような複数の物体が歩道などに落ちているのがわかります。
イスラエルの救急当局によりますと、アラド近郊では7歳の女の子が重傷を負い病院で治療を受けていて警察が詳細を調べているということです。
イラン外相 “攻撃前に一部の国に通告”
イランのライシ大統領は14日、声明を出し、「イラン国民の利益に反するいかなる試みも、より激しい対抗措置を招き、後悔することになるだろう」として、イスラエルをけん制しました。また軍全体のトップ、バゲリ参謀総長も、「作戦は成功裏に完了し、すべての目的は達成された」とアピールしました。
一方革命防衛隊のトップ、サラミ総司令官は「われわれは限定的な作戦を実施した。この作戦はもっと大規模に行うこともできたが、イスラエルがわれわれの大使館を攻撃するのに使った能力と同等のレベルまで抑えた」と述べ、攻撃は抑制的に行ったと主張しています。
さらにアブドラヒアン外相は会見で「作戦のおよそ72時間前にわれわれは周辺国などに対し、イランの対抗措置が正当な自衛の枠組みの中で確実に行われることを伝えていた」と述べ、大規模攻撃について事前に一部の国に通告していたことを明らかにしました。
G7首脳声明「前例のない攻撃 最も強い言葉で非難」
G7=主要7か国の首脳は14日、オンラインで首脳会合を開き、議長国のイタリアが首脳声明を発表しました。
それによりますと「イランによるイスラエルへの直接的、かつ前例のない攻撃を最も強い言葉で非難する」とした上で、「イスラエルと、その国民に対する全面的な連帯と支持を表明し、その安全保障に対するコミットメントを再確認する」と指摘しています。
その上で「イランの行動により地域は不安定化に向けてさらに踏み込み、制御不能な地域情勢のエスカレーションを引き起こす危険性がある」として、事態の悪化を避けるため情勢を安定させる努力を続けていくことを確認しました。
また「イランとその代理勢力に対し攻撃を停止するよう要求する。われわれはさらなる不安定化への行動に対して措置を講じる用意がある」として、イラン側をけん制しています。
トランプ前大統領「アメリカが弱さを見せたからだ」
秋のアメリカ大統領選挙で返り咲きを目指す共和党のトランプ前大統領は13日、東部ペンシルベニア州で演説し、イランがイスラエルに対する報復攻撃を行ったことについて「アメリカが大きな弱さを見せたからだ」と述べて、バイデン政権の姿勢がイランによる攻撃を招いたと批判しました。
そのうえでトランプ氏は「われわれが政権に就いていればこんなことは起きなかった」と主張し、「われわれは強さによって世界に平和を取り戻す。国内外でのアメリカの強さを復活させる」と訴えました。
米大統領補佐官「緊張をさらに高めること望んでいない」
アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は14日、ABCテレビのインタビューで「イスラエルへの前例のない攻撃はイスラエルだけでなくアメリカやパートナーの国々によって対処された。イスラエルは自国の防衛に成功し、アメリカはそれを支援するという約束を確かに果たした」と述べました。
またバイデン大統領は13日夜の電話会談でネタニヤフ首相に対し、改めてイスラエルの自衛を支援し続けると伝えたとした上で「バイデン大統領はイランとの戦争を望んでいないことをはっきりと表明してきておりアメリカはこの地域の緊張をさらに高めることも望んでいない」と強調しました。
またガザ地区での戦闘休止などをめぐる交渉については、情報交換が続いているとしてイスラム組織ハマスの対応次第で人質の解放や人道支援の拡大に向けた戦闘休止が可能になるという認識を示しました。
【14日詳細】イラン イスラエルに無人機やミサイルで大規模攻撃
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