北朝鮮が、自国内で流通するスマートフォンを自ら製造する技術を有しているとみられることが、中朝情勢に詳しい関係者の調べで明らかになった。各国で使われているスマホと比べて容量やメモリーが不足し、基本ソフト(OS)も他国製を使用しているものの、スマホを組み立て作動させる技術は一定水準に達している可能性が高いという。(ソウル・上野実輝彦)

北朝鮮製とみられるスマホ。ホーム画面には「Android」のアプリがある(関係者提供)

◆「青い空」ブランド

 この関係者は、中国に滞在していた2023年に北朝鮮で製造されたとみられるスマホを手に入れた。製品名は「プルンハヌル(青い空)」。その後、日本の専門機関に解析してもらったところ、実際に北朝鮮で製造され組み立てられた可能性が高く、外見はモロッコの通信会社が販売するスマホに酷似していることが分かった。  OSは米グーグル社のアンドロイドで、使い方も一般的なアンドロイドスマホとほぼ同じ。北朝鮮と国交のない米国の製品が使われているのは不可解だが、「グーグルの正式承認を得ないまま使用している」(関係者)とみられる。

◆残ってしまった「韓国語」という表現

言語設定画面では日本語、中国語のほか「韓国語(朝鮮民主主義人民共和国)」との表現が使われていた(関係者提供)

 興味深い特徴がいくつか見つかった。例えば、言語設定の画面では「韓国語」と表現されているが、言語を選択した後は、北朝鮮が自国語を指す「朝鮮語」という表記が一貫して使われている。設定画面だけはグーグル社のもともとの表現が残っていたようだ。  画面上にアプリストアがなく、アプリを自由にダウンロードできない仕様になっているのも特徴。北朝鮮では、当局が許可したアプリのみを実店舗でインストールする制度になっているとされ、アプリストア機能はスマホから削除されていたとみられる。

◆5日充電しなくてもOK メモリ容量はイマイチ

スマホ裏側には「プルンハヌル(青い空)」と書かれ、見た目はモロッコ製スマホと酷似している(関係者提供)

 容量は64ギガバイト、メモリーは3ギガバイトで、同時期に製造され世界的に使われていたスマホよりも劣っていた。半面、5日間ほど充電しなくても使用に問題がないなど、電池の持ちの良さが目立った。  この関係者は、こうした特徴について「北朝鮮国内での独特の使用方法に最適化させたのではないか」と指摘。その上で「スペックが一般的なスマホより劣っていたり、他国製品の模倣をしていたりしたとしても、自国用にローカライズして問題なく作動させるには相当な技術力が必要だ。北朝鮮の技術水準はあなどれない」と話した。 

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