【バンコク=藤川大樹】ミャンマー国軍と抵抗勢力の戦闘が続くミャンマー東部カイン州で、国軍側が徴兵制で入隊したばかりの新兵や、別の地域で降伏したことがある兵士らを、前線に送り込んでいる可能性が浮上している。抵抗勢力側の複数の関係者が取材に証言した。こうした兵士は士気が低く、死傷者が増えているもようだ。

◆「性能の良い武器を持っているが、士気は低い」

 カイン州では、少数民族武装勢力「カレン民族解放軍(KNLA)」や民主派の武装組織「国民防衛隊(PDF)」が連携し、国軍と戦闘を続ける。

戦闘で殺害された国軍兵士が付けていたとされるバッジ=藤川大樹撮影

 「私たちより性能の良い武器を持っているが、士気が低い。多くの国軍兵士が進軍途中で死んでいる」  PDFの民兵(32)はそう語ると、目の前に数十個のバッジを広げた。戦闘で殺害した国軍兵士の服に着いていたものだという。  抵抗勢力側は4月上旬に国境貿易の要衝ミャワディ近くのティンガンニーナウンを掌握するなど攻勢を強めている。国軍は奪還するため、コンバウン朝の初代王にちなんだ「アウンゼーヤ」と称する1000人規模の増援部隊をミャワディへ向けて送り込んでいるが、途中で足止めされている。

◆退役した老兵まで駆り出している?

 抵抗勢力側の証言によれば、増援部隊には徴兵されたばかりで訓練が不足している新兵や、中国国境の北東部シャン州での戦闘で降伏した国軍部隊の兵士、いったんは退役した老兵らが含まれているという。KNLA幹部は「増援部隊のうち300~400人が死傷した。雨期は交通や通信が悪くなるため、近く撤退するだろう」と言った。  一方、抵抗勢力側の死傷者も少なくない。

26日、ミャンマー東部カイン州での戦闘で左足を失った民兵=藤川大樹撮影

 タイとミャンマーの国境近くの医療施設では、135人の負傷した民兵たちが入院していた。施設の責任者によれば、ミャワディを巡る一連の戦闘で、入院患者は40人近く増えたという。多くが10代後半から30代半ばだ。  敷地内は犬が歩き回り、ハエが飛んでいた。ベッドには、片足を失ったり、頭に大けがを負って寝たきりになった民兵たちの姿があった。PDFのドローン(無人機)部隊に所属していた民兵(30)は「120ミリ迫撃砲の攻撃を受け、左足を失った」と振り返った。 

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