佐賀市の佐賀女子短期大学は今年度から男子留学生の受け入れを始めました。今年1月時点の県内の留学生は統計開始以降最多となる約1200人で、中でもミャンマーからの留学生は増加傾向にあります。この春、ミャンマーのヤンゴンから来日した男子留学生を取材しました。

【ミャンマーから留学 アウンミョーミンさん】
「大学で2年間より専門的な介護スキルを身につけ、利用者により良いケアを提供できる介護福祉士になりたい」

【佐賀女子短期大学 今村正治学長】
「留学生の新入生の皆さん、ようこそ日本へようこそ佐賀へ」

民族衣装に身を包んだ新入生。ミャンマーからの留学生、アウンミョーミンさん22歳です。アウンさんは2006年までミャンマーの首都だったヤンゴン出身。介護や福祉について学ぼうと、この春、佐賀女子短期大学に入学しました。
1966年に開学した佐賀女子短期大学。学生の確保と介護職などの人材育成を目的に、今年度から初めて男子の留学生の受け入れを始めました。今年度の留学生はミャンマーやネパールなどから72人で、このうち7人が男子大学生です。

入学式から約2ヵ月。昼休み、アウンさんはクラスメイトの留学生と過ごすのが日課です。

【クラスメイト】
「(アウンさんは)周りの人たちにとても優しい。面白い」
「勉強も一生懸命して、何か必要なことがある時はいつも手伝っている」

【リポート・波佐間崇晃】
「これからこちらの教室では、介護や福祉に関する漢字のテストが行われます。学生たちは復習に余念がありません」

アウンさんが在籍するのは福祉とソーシャルケアコース。授業は月曜日から木曜日まで毎日5コマで、週に1回、漢字テストが行われます。
「疲労」「疾患」「麻痺」など介護福祉に関する言葉が中心で、日本人の学生も一緒に受けます。日本と中国、台湾といった限られた国と地域でしか日常的に使われない漢字。それ以外の国や地域の人にはデザインのようにしか見えないため読み書きはかなり難しいとされます。アウンさんの結果は…。
しっかり満点をとっていました。

そして介護実習です。介護が必要な人の血液の流れを良くして、いわゆる床ずれをしないよう定期的に体勢を変える「体位変換」に臨みます。

【ミャンマーから留学 アウンミョーミンさん】
「思ったより難しい。まだ頑張りたい。まだまだだと思います」

【佐賀女子短期大学地域みらい学科 前山由香里准教授】
「介護の勉強をするという目的をもってきていますので、学習意欲は高いです」

ミャンマーの実家からの仕送りはないため、県や国などからのサポートを受けています。

アウンさんなど留学生の一部が利用しているのが、県社会福祉協議会の貸付制度です。貸付金額は2年間で最大164万円。卒業後1年以内に介護福祉士の資格を取得し、県内の介護福祉施設に3年間もしくは5年間勤務することを条件に、返還は免除されます。

アウンさんは学校の近くにあるアパートで一人暮らし。晩ご飯を食べるとすぐに日本語の自習が始まります。毎日1時間ほど机に向かいます。
介護の仕事では要介護者とのコミュニケーション能力が求められます。留学生は就職活動で「日本語能力試験」などの資格を持っているかどうかを確認されることが多いといいます。

【ミャンマーから留学 アウンミョーミンさん】
「2021年に日本語の勉強を始めました。その後で介護福祉士になりたいと思いました。ミャンマーではできない。(介護の仕事は)ボランティアだけ」

母国では2021年2月にクーデターが発生し、現在は軍が実権を握っています。外務省によりますと、軍は民主派勢力などへ空爆を続けていて、国内で250万人ほどが避難生活を余儀なくされているということです。

【ミャンマーから留学 アウンミョーミンさん】
「戦争はあります。2021年からは爆発が都会でもあります。危ない。死ぬ爆発もある。アングリーという感じ」

クーデター後はインフレが起き、通貨価値が下落しているミャンマー。1日の最低賃金は日本円に換算して412円ほどです。近年は通貨価値が高い外国に就職し、ミャンマーへの仕送りを希望する若者が増えています。

【ミャンマーから留学 アウンミョーミンさん】
「(就職したら収入の一部は)家族に送るつもりです」

アウンさんが日本に興味をもつきっかけとなったのは、あのアニメです。

【ミャンマーから留学 アウンミョーミンさん】
「(鬼滅の刃の)煉獄杏寿郎です」

コミックスの累計発行部数は1億5000万部を超える「鬼滅の刃」。お気に入りは主人公たちを守り敵と戦って命を落とした「煉獄杏寿郎」です。

【ミャンマーから留学 アウンミョーミンさん】
「戦いの現場にいる仲間を誰も死なせないで自分の責務を守ったので良い人だと思う。私も責任を守りたい。たとえば家族のために頑張るという感じです」

家族は両親と姉、妹の5人です。家族の集合写真は1枚しかありませんが、肌身離さず持ち歩き、思いを馳せます。
毎晩欠かさないのが家族とのテレビ電話です。まずは日本で介護福祉士になることが目標ですが、心の中心にあるのはやはり家族と母国ミャンマーです。

【ミャンマーから留学 アウンミョーミンさん】
「毎晩寝る時に夢を見ます。昨日もミャンマーにいる感じになりました。日本も好きです。でもミャンマー人なので、(いつかは)母国へ帰る。いろいろな経験をしてから、国へ帰るつもりです」

アウンさんが今、日常生活で苦労しているのが、方言の聞き取りです。教科書や参考書に載っておらず、相手に聞き返すうちに「もういい」と言われてしまうこともあるそうで、時間をかけて習得しているそうです。
佐賀女子短期大学ではこれまでの5年間に約50人のミャンマーの留学生を送り出していて、県内で働いている卒業生も多いそうです。

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