「私たち市民は、こういった魂の入った報道に心を動かされ、声を上げていく力を得る」

 5月24日配信の記事「ラファを去る決断、最後の夜の空爆 家族には隠した感情を伝えたい」に、国際連合事務次長の中満泉さんは、こうコメントした。

 記事は、パレスチナ自治区ガザ南部ラファで取材を続けてきたハンユニス=ムハンマド・マンスール通信員によるルポルタージュ。イスラエル軍の激しい攻撃が続くなか、生まれ育った街から退避する葛藤をつづった。

 「マンスール通信員の言葉一言ひと言が胸に突き刺さります」。中満さんはコメントをそう書き出した。続けて、ガザの人口の半数以上が戦火で避難を余儀なくされ、わかっているだけで3万5800人が犠牲となり8万200人が負傷した、と5月23日時点の国連人道問題調整事務所の調査データを伝えた。

 中満さんは、ガザへの攻撃が長引き犠牲者が増え続け、人道危機が壊滅的状況になる中、「国連総会、国際司法裁判所、国際刑事裁判所の判断や、スペイン・ノルウェー・アイルランドのパレスチナ国家承認などからわかるように、国際社会からの圧力が高まっていることも事実」と指摘。その上で、国際法は普遍的に守らなければならず、国際秩序の根本に関わることだと強調した。「国際法の尊重、停戦と持続的な和平プロセス開始への声を、あきらめずにあげ続けなければなりません」

 最後にマンスール通信員と家族の安全を祈るとともに、自らの信念に触れてコメントを結んだ。

 「『統計』の一部になってしまったかのような、避難する人々や犠牲となった人々それぞれの、一人ひとりの人間としての尊厳に私たちが心を寄せることはこの上もなく重要だと、私は自らの仕事の上でもいつも思っています。そのためにも、このような記事は貴重だと考えます」

 この記事や、中満さんのコメント全文はこちらから(http://t.asahi.com/wnvk)。同じ記事には、国際政治学者の三牧聖子さん、朝日新聞の高久潤エルサレム支局長もコメントしています。

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