報告書では拘束された人たちが、外部から隔離され、非人道的な状況に置かれているとしたうえで性的な暴行や激しい殴打、さらに犬にけしかけられる脅迫や水責めなどを受けていると指摘しています。

国連はパレスチナの人々に対する暴行や拷問などについて、徹底的な調査と再発防止のための措置を求めています。

左足を負傷 切断を余儀なくされた拘束者も

イスラエルの人権団体によりますと、ガザ地区ではこれまでに推計で4000人が一時、拘束され、今も一部の人が施設で拘束されたままだということですが、詳しい状況は明らかになっていません。

ガザ地区南部のハンユニスに住むソフィアン・アブサラさんは、ことし2月から2か月近くにわたりイスラエル軍に拘束されました。

家族6人で暮らしていたアブサラさんは、イスラエル軍の地上侵攻でハンユニスの自宅を追われ、たどりついた先の避難所の学校にもイスラエル軍が侵攻し、ほかの住民とともに拘束されたといいます。

そして両手を縛られ目隠しをされ、トラックの荷台に乗せられてイスラエル国内にあるとみられる施設に送られました。

その際にイスラエル軍の兵士から棒や銃で殴られたり、蹴られたりといった暴行を受けたということで、アブサラさんは左足に傷を負いました。

当時の状況についてアブサラさんは「兵士たちは私たちを銃や棒で殴ったり、蹴ったりし、拘束されている中で最悪の時間でした。私は足にけがを負いましたが、トラックに4時間も乗せられ、足の感覚もなくなっていたので、その時はけがに気付きませんでした」と話していました。

拘束された施設でもアブサラさんは毎日のように暴行を受けたということで、劣悪な衛生環境で左足の傷は化のうし、次第に腫れていったといいます。

アブサラさんは薬を求めましたが、受け入れられず、けがをしている足を棒で殴られたこともあったということです。

症状を訴え続け、ようやく病院に運ばれた時には治療するには手遅れで、左足を切断することを余儀なくされました。

アブサラさんは「命のためには足の切断を選択しなければならないと医師は言いました。私は孤独で家族もいない中で、とても難しい決断を迫られました」と話していました。

アブサラさんは15年以上タクシーの運転手として働き、政治とは無縁でハマスとの関わりがないことを訴えて釈放されましたが、ハンユニスの自宅は破壊され、いまはテントでの生活を強いられています。

アブサラさんは「足を失ってから家族の面倒を見ることも食料や水を探しに行くこともできません。すべてが180度変わり、状況は本当に悪くなりました」と訴えていました。

イスラエル軍は収容施設の状況についてNHKの取材に対し「施設では1日に1回、健康状態を確認し、必要であれば十分な医療を提供している。イスラエルの法律と国際法に従っている」とコメントしています。

拘束問題 ヨルダン川西岸のパレスチナでも急増

イスラエル当局によるパレスチナ人の拘束はヨルダン川西岸のパレスチナでも急増していて、地元の人権団体によりますと去年10月以降だけで9000人以上のパレスチナ人が拘束されたということです。

このうち、ことし3月までの3か月間、イスラエルの刑務所に収容されたパレスチナ人の人権活動家ムンゼル・アミラさんがNHKの取材に応じました。

アミラさんが拘束された理由はガザ地区の子どもたちの様子をSNSに投稿したことが扇動罪にあたるとされたことでした。

アミラさんは過去にもイスラエル当局に何度か拘束されたことがありますが、去年10月以降、刑務所などでのパレスチナ人に対する扱いが極度に悪化していると指摘します。

アミラさんによりますと、刑務所の1部屋にはこれまで6人ほどが収容されていましたが、今は13人ほどと、以前と比べておよそ倍の人数が収容されていたということです。

さらに、1日8時間あった自由時間は3日に1度、わずか15分に減らされ、食事は以前よりも極端に少なくなったとして「食べるものがなかったので3か月で33キロやせました」と話していました。

パレスチナ人の拘束をめぐってはイスラエル国内でも問題視する声があがっていて、イスラエルの人権団体は問題が指摘されている複数の施設のうち1か所の閉鎖などを求めて最高裁判所に訴えを起こしています。

訴えを起こした人権団体の1つで法務部門を担当するダニエル・シェンハルさんは「10月7日以降の刑務所の状況は深刻で非常に悪いです。人々をこのような非人道的な環境で拘束し、拷問することは許されません。イスラエル当局や軍が法を破っていることが問題で、その違法行為を止めるために私たちは活動しています」と話していました。

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