【ソウル=木下大資】終戦直後の1945年8月24日、帰郷する朝鮮人労働者らを乗せた旧日本海軍の輸送船が京都府の舞鶴湾内で爆沈した「浮島丸事件」を巡り、日本政府が保有していると明かした乗船者名簿について、韓国政府が日本側に提供を求めたことが分かった。韓国では、過去に日本が発表した死者数などに疑念が持たれてきた経緯があり、政府も名簿に関心を寄せている。

◆遺骨の一部は目黒・祐天寺に

東京都目黒区の祐天寺(資料写真)

 犠牲者の遺骨の一部は今も東京都目黒区の祐天寺に保管されている。戦時中の動員被害者らの遺骨返還を担当する韓国・行政安全省の関係者は「韓国外務省を通じ関連資料を日本側に要請した」と説明。韓国外務省の当局者は「最近存在が確認された浮島丸の乗船者名簿の入手に努めている。事件の真相究明を含め、日本政府が責任感を持って誠意ある措置を取れるよう努めていく」と話している。  日本政府は長年、乗船者名簿の存在を認めていなかったが、今年になって情報公開請求に3種類を開示。5月末には厚生労働省が「名簿」と名の付く資料が「おおむね70くらいある」と衆院外務委員会の質疑で明らかにした。

◆日本政府発表の犠牲者数に疑念

 浮島丸事件に関して日本政府は、米軍が敷設した機雷に接触したのが原因と発表。朝鮮人乗船者3735人のうち、524人が死亡したとした。一方、韓国では生存者の証言などから乗船者は6000~8000人で、犠牲者は日本の説明より多いとの主張が提起されてきた。日本への不信を背景に「意図的な爆破」説も根強い。 

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