チートル氏は複数の調査が現在も続いているとして、事件の詳細についての証言は避けた(ワシントン)=ロイター

【ワシントン=赤木俊介】米シークレットサービス(大統領警護隊)のチートル長官は22日の米議会証言で、13日に銃撃を受けたトランプ前大統領の警護は「過去数十年で最悪の失敗だった」と語り、「警護体制の不備の責任を全面的に負う」と表明した。チートル氏に対しては辞任を求める声があるが、証言の場で可能性を否定した。

チートル氏は米議会下院の監督・説明責任委員会の公聴会で証言した。同氏は事件の調査がまだ初期段階にあるため「不正確な情報を提供したくない」と強調し、トランプ氏を警護していた人数など、事件の詳細についての証言は控えた。同氏の証言に対し、いら立ちを見せる議員もいた。

トランプ氏の銃撃を巡り、複数の調査が並行して始まっている。米国土安全保障省は21日、超党派の独立調査委員会を設置したと発表。元国土安全保障長官などを調査委員として起用した。同省の監察官室のほか、シークレットサービスも内部調査を実施している。米連邦捜査局(FBI)は暗殺未遂事件として捜査を続けている。

公聴会では共和党議員が相次いでチートル氏の辞任を求めた。一方、同氏は「シークレットサービスを主導する人物として最もふさわしい人間は現時点で自身だと考える」と述べ、辞任の可能性を否定した。

チートル氏は集会で不審人物の目撃情報が「2〜5件報告された」と証言した。容疑者が距離計を使用していたため、直ちに脅威として認識するべきだったという指摘に対し「距離計は集会、特に野外の会場で禁止されているものではない」と反論した。

警護体制の不備につながったとされるシークレットサービスの人員不足に関して、チートル氏は不足していたと認める一方、事件発生以前から採用に努めていたと説明した。

チートル氏は米当局が集会が開かれる数週間前に入手したとされるイラン政府によるトランプ氏を狙った暗殺計画の情報も把握していたと証言した。チートル氏は警戒態勢がイランからの脅威に対処するのに十分だったという見解を示した。

ターナー下院議員(共和党)は「20歳の容疑者よりイランの暗殺者のほうが有能だと思うか」と皮肉交じりに問い詰めた。チートル氏は「(警備に)穴や不備があったことはすでに認めている」と返答した。

チートル氏によると、シークレットサービスは現在36人の要人を警護する。同組織が警備を担当する今後のイベントは8月の民主党の全国大会や9月の国連総会のほか、直近のイスラエルのネタニヤフ首相の訪米も含まれる。チートル氏は25年1月に控える次期米大統領の就任式の警備計画も練り始めていると説明した。

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