中国企業が関与するアジア太平洋地域の海底ケーブルのネットワーク(各種情報源からNikkei Asia作成)

国際的な貿易・金融取引の制限は非軍事的な制裁の手段として強いメッセージを放ちます。しかし、日本経済新聞社の英文媒体「Nikkei Asia」で7月に読まれた記事をみると、制裁に直面するアジア企業のしたたかさが浮かび上がります。看板企画「The Big Story」で取り上げた中国の海底ケーブルメーカーは、米国の貿易制限の対象になっても意に介さず、中国主導の通信網の構築を支えています。

米国の取引制限措置はむしろ地元メーカーの成長を促しました。取材に応じた中国企業関係者は「米国のブラックリストは気にしない」と言い放ちました。2023年から5年間で敷設される計画の総延長77万キロメートルのうち45%に中国企業が関わる見込みだといいます。

【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】 China's subsea cable drive defies U.S. sanctions

ミャンマー軍事政権の武器関連取引では、米国の働きかけで監視を強めたシンガポールに代わり、タイの民間銀行が決済の仲介役として台頭していることが国連特別報告者の調査で判明しました。空爆に使われる航空燃料の供給を断つべきだという声も強まっていますが、金融機関を通じた取引を遮断するには至っていません。

【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】 Myanmar military shifts arms financing to Thai banks from Singapore

香港も貿易規制を逃れるルートになっています。非営利団体の調査によると、ウクライナ侵略で制裁対象となったロシアに、米企業の製品を含む数百万ドル相当の高性能半導体が輸出されていました。ペーパーカンパニーを使った取引を防ぐには「従来の制裁では限界がある」(担当者)と指摘しています。

ブータンの玄関口の都市パロの城郭、パロゾンに集まる若い修行僧=ジナラ・ラスナヤケ撮影

ライフ&アーツ ブータンの秘境を巡る旅

中国とインドに挟まれたヒマラヤ山脈の南麓にあるチベット仏教国、ブータンを記者が訪れました。外国人旅行客に国境を開放して約50年、文化や環境への影響を抑えながら社会経済的利益を最大化する「高付加価値・低影響」の観光モデルを追求しています。

豊かな自然、日常生活を導く複雑な信仰体系、独特なグルメなどに触れようと、森に覆われた山々や渓谷といった「秘境」を訪れる観光客は増えつつあります。一方で観光業にはいまだに新型コロナウイルス禍の爪痕が色濃く残り、経済的困難から外国へ移住する若者が増えるといった問題も抱えています。

【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】 Exploring Bhutan's hidden valleys and nature trails
中国は「双循環」戦略を掲げ、外国の資源や技術への依存度を減らそうとしている=ロイター

オピニオン 中国の外資企業の展望開けず

アイルランドのトリニティ・ビジネス・スクールで経営学を教えるルイス・ブレナン教授が中国における外資企業の置かれた環境の変化を論じました。企業は中国でのプレゼンスを保ちつつも他国に調達網を広げる「チャイナ・プラス・ワン」戦略を推進していますが、中国事業を維持することに「持続可能な未来はあるか」と問います。

外資企業が優位性を保ってきた半導体製造装置での地場企業の市場シェア伸長を例に、技術力を高める中国企業との競争の厳しさが増していると指摘します。治安当局の監視強化で、外資系企業の前途は「ますます限定される」と述べました。

【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】 The future for foreign companies in China looks increasingly finite

国・地域別トップアクセス

@ベトナム デジタル決済に顔認証義務化

ベトナムでは、デジタル決済時の顔認証の義務化についての記事が読まれました。同国の銀行などで390ドル相当以上の取引を行う際に、アプリを通じた顔認証を必須とするもので、当局やシステムの開発会社は「利便性や安全性の向上のため」と説明します。一方、ベトナムは世界でも有数のサイバー攻撃が多い国で、かえってデータ漏洩が起きる危険性を指摘する専門家もいます。

@インドネシア 日本のホテル業界、人材獲得行脚

人手不足に直面する日本のホテル業界がアジアの新興国で人材獲得に乗り出しました。ジャカルタで開かれた就職イベントを取材した記事は東南アジア各国や日本で広く読まれました。「円安でも日本で働きたい」という20代の参加者の声や「海外に人材を送り出したい」というインドネシア政府幹部のインタビューも盛り込みました。

@香港 クレーンゲーム店急増、景気悪化映す

香港でクレーンゲーム機を置いたゲームセンターが増えています。若者の起業が目立ち、オーナーも短期契約なら有名店が戻ってきたときにすぐに切り替えられるとの思惑から、安い賃料で貸しています。中国本土からの観光客向けの宝石店やドラッグストアだった場所もあり、不動産関係者は「景気悪化を反映している」と指摘します。

@米豪 太平洋の沈没船に油漏れの危機

米国やオーストラリアでは、第2次世界大戦中の沈没船からの油漏れについて、太平洋島しょ国が日本などに対策を求めていることを取り上げた記事が関心を集めました。太平洋には3000隻を超す沈没船があるとされ、時間の経過とともに環境汚染のリスクが高まっています。「太平洋・島サミット」にあわせ、市民団体による潜水調査時の写真とともに掲載しました。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。