高級ブランド「ディオール」のバッグ、日本円で約30万円相当を受け取った収賄などの疑いで、韓国の検察は尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領夫人の金健希(キム・ゴンヒ)氏を20日に事情聴取したことを明らかにした。

金夫人を巡ってはこれまでも経歴詐称など数々のスキャンダルが報じられてきたが、聴取はなぜこのタイミングだったのか。龍谷大学の李相哲教授に聞いた。

「調査しました」アピールが狙い

ーーなぜ今になって12時間も聴取?
今の韓国の政治状況と密接に関係しています。野党「共に民主党」は現在、尹大統領を弾劾するための材料集めを進めていて、まずは夫人の調査から入ろうとしています。それも検察に任せるのではなく、特別検事を任命して取り調べを行おうとしています。しかし政権側は検察で十分だとして、「検察による聴取が行われた」という事実を作る必要があったのだと思います。

龍谷大学・李相哲教授
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ーー検察による聴取は尹大統領が計画したもの?
そうです。今の検察は、検事総長も法務長官も尹大統領が任命した人たちです。しかし検察内部も一枚岩ではないため、今回取り調べを行ったのはソウル中央地検長です。「調査をしました」とアピールする狙いと見るのが一番わかりやすいです。

検察庁ではなく第3の場所で聴取

現在51歳の金夫人は夫の大統領就任当時から“ファッションショー”のような派手なドレスを着ることなどで注目を集めているが、国内の評判は2分していると李教授は話す。

さまざまなドレスを着こなす尹錫悦大統領夫人の金健希氏(提供:韓国大統領府、EPA=時事

ーー金夫人の韓国国内での評判は?
韓国国内では好き嫌いがはっきりと分かれていて、一番わかりやすい指標だと、尹大統領を支持する35%前後の人々は夫人に対しても友好的で、野党「共に民主党」を支持する30%近くの人たちは夫人にかなり批判的です。

ーー疑惑は尹政権にどのような影響を与える?
検察としては、大統領の奥さんの疑惑を晴らすために「しっかりと調査しました」というようなアリバイを作るつもりでしたが、「共に民主党」は調査をした場所が検察庁ではなく第3の場所だったこともあり「特別扱いをした」と攻撃しています。

今回の調査の韓国世論の受け止めは現時点では分かれていて、夫人の疑惑を晴らすには至らないと思います。まだしばらく尾を引きそうです。

弾劾なら日韓関係にも影響

今回の「共に民主党」による夫人の疑惑追及は、あくまでも大統領を弾劾に追い込むための1つの手段だと李教授は指摘するが、万が一弾劾に至った場合は、日韓関係はゼロベースに戻る危険性があると話す。

ーー第3の場所で聴取することはよくある?
現職の大統領夫人なので警護をかなり厳重にしなければならないため、検察庁の中で調査するのは問題があると判断したのだと思います。しかし検察からすると、法律の前ではすべての国民は平等なのに、なぜ大統領夫人だけは夫人が望む場所で調査をしたのかという点を問題視しています。

これまでにも過去2人の大統領夫人が退任後に調査を受けていますが、今回は現職大統領の夫人だったので警護には万全を期すという建前もあって検察庁に行かなかったと考えられます。しかし野党は「それは平等ではない」と攻撃しています。

ーー今回の問題が日韓関係に影響することは?
もし夫人に対する調査が不十分だと世論が批判に回って、「共に民主党」が提出している夫人に対する特別検事法が国会を通過し、大統領がその影響を受けて弾劾されることがあったら、日韓関係はゼロベースに戻る危険性があります。

今「共に民主党」が描いているプランというのは、夫人が目的ではありません。夫人の問題を追及し続けることで最終的に大統領を弾劾したいわけです。そこで大統領選挙を早めて、民主党大統領を選ぶことが目的ですから、その場合は日韓関係はゼロベースに戻るのは間違いないです。

ーーなぜ直接大統領を攻撃しない?
尹大統領は27年間検事をやって大統領に当選した人です。家族が不正に関わったという話もあまり聞かないし、韓国国内でよく問題になる子どももいません。そのため今、ターゲットになり得るのは唯一の家族である奥さんです。そこで大統領選挙に出た瞬間から野党はターゲットを奥さんに絞って攻撃している状況です。

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